「LINE」が会員の通信履歴や連絡先データを解析し、個人単位の信用情報格付けを行い、貸金ビジネスを開始する模様です。
「ビッグデータの活用」といえば聞こえはいいですが、統計データじゃなくて個人単位の信用情報のスコアリングなのがかなり引っ掛かります。登録時の会員規約をあまり読まずに「同意」ボタンを押して会員登録してしまっている私も悪いっちゃ悪いのですが。
遠くない将来、こうした通信サービスやキャリアの支払い履歴や通信履歴、連絡先 (つまりは家族、友人など) の交友関係から勝手に信用情報のスコアリングが行われ、社会的な格付けが行われてしまうのかも知れませんね。
LINEが推進する、信用情報スコアリングとは
基本的にはクレジットカード入会審査におけるスコアリングとやろうとしていることは同じです。
何らかの基準からその人の支払い能力に点数を付けて、「この人は80点だから300万円まで枠をつけてあげよう」、「この人は45点だから100万円まで」、「この人は20点未満の赤点だから融資できないな」、というイメージですね。
例えば、信用力診断サイトの「マイスコア」ではご自身の年収や勤続年数などを入力することで疑似的に自分の信用情報をスコアリング出来ます。
通信アプリ大手のLINEはことし、利用者数7800万のメッセージアプリのデータを基に算出した信用スコアを活用して融資を行うサービスに乗り出します。
信用スコアから一人一人に適した貸し付け利率や利用できる金額が決まることから、利用者は自分の使えるお金に合わせて交際費や医療費など急な出費にも対応しやすいとしています。
NHKではさもごく最近のニュースかの様な伝え方をしていますが、実は2018年11月27日に開催されたフィンテックカンファレンスにおけるLINEグループ事業戦略発表会で既に発表されている既知の情報です。報道しない権利というやつですね、NHK。
スコアリングは、個々人に対していくらまで融資可能か、というデータを作成して様々な事業に活用することが目的です。
あなたの信用度を自動計算!「スコアリング」の実態
今回はクレジットカード入会審査の際に行われる自動審査システムによる、「スコアリング」の詳細について書いてみたいと思います ...
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例えば、クレジットカード入会審査においては、以下の属性を用いてカード入会申し込みしてきた人を入会させて良いか落とすか、入会させる場合はいくらまで立替えて良いかという判定を行っています。
- 年収
- 勤務先、勤続年数
- 持ち家の有無
- 既婚 or 未婚
- 扶養家族の有無
- 指定信用情報機関における支払い履歴
こうした、信用情報スコアリングデータベースを、既存の指定信用情報機関 (CIC, JICCなど) の情報によらず自社サービスの会員の通信履歴・連絡先情報・決済履歴などを用いて構築し、自社ビジネスに利用する流れになります。
「LINEスコア」では、みずほ銀行およびオリコが有する与信審査ノウハウに加えて、非金融領域のデータとして、「LINE」およびLINEファミリーサービスの利用状況をはじめとするLINEプラットフォーム上での行動傾向データを活用。ユーザーの追加情報入力等を踏まえて、総合的にスコアを算出する予定だ。スコアの算出は、ユーザーからの同意をもとに行われる。
某巨大掲示板では、「俺の通話履歴が勝手に抜かれている」などと騒いでいる方もおりましたが、一応ユーザからの同意を得た上でスコアリングを行うとのことです。
ただしこの、「行動傾向データ」というのが何を意味するのかは分かりません。LINEをインストールしたとき、しきりに位置情報を常時ONにしてLINEを使っていない時でも常時位置情報を提供するように求められた気がしますが。。。
ユーザの位置情報を分単位で監視して、そこからどのサービスをどれぐらい利用しているのか、という傾向を割り出すためのものなのでしょうか?そして、その行動傾向データや、LINE Pay等のチャージ頻度・金額・利用内容などから支払い能力を推測、よりお得な融資サービスなどの営業を行うのかな?と想像が膨らみます。
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百貨店の昔ながらの「外商」に似ているのかも
自社のサービス利用履歴から、優良顧客を選別してその人たちにより消費してもらうために各種の優待サービスを提供したり、顧客の自宅へ足を運んで高額商品の取引をしたり、といった囲い込みをどの百貨店も多かれ少なかれ行っています。見方を変えればこうしたデータ解析による顧客選別は外商制度に似ているのかも知れません。
支払いに関する履歴以外も細かくチェックされていると思うとちょっと気持ち悪いですが。
信用情報スコアリングビジネスの問題点
私が古い人間だからかも知れませんが、こうした信用情報を信用情報機関や金融機関以外が行うことによる弊害が懸念されます。
何らかの形で既にグループ内に金融関連企業を持っていたり、金融関連の経験が長い企業がスコアリングサービスを行うならまだ抵抗もないのですが。
またNTTドコモはことし3月から、携帯電話料金の支払い履歴や利用状況などを基に個人の信用スコアを算出し、金融機関などに提供するサービスを始めます。
ヤフーもネット通販や検索の履歴などの情報を活用し、信用スコアを企業に提供する実証実験を始める計画です。
中国ではこうした信用スコアが普及していて、スコアが高いほど不動産契約や就職活動などで優遇される仕組みが広がっているということです。
日本でもことし、信用スコアを活用したサービスがどこまで広がるのか注目されます。
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- 信用情報そのものの精度が低いのではないか
- 目的外の利用で不利益を被る人が増えるのではないか
- 恣意的なスコアリング基準による思想信条の統制につながりはしないか
- 融資や投資の過剰な勧誘が増えるのではないか
個人的に懸念しているのはこの辺りでしょうか。個人情報でも特にセンシティブな部分を扱うため、取扱企業もきちんとした会社であって欲しいのは万人が望むところでしょうし、当初の目的から大きく逸脱した利用が行われた場合や情報が漏洩した場合のペナルティなどが明示されていない段階では不安が残りますよね。
購入履歴、支払い履歴から情報を収集するのはまだ分かりますが、会話の履歴を見る必要があるんでしょうか?「LINEってイマイチ使えないよねー」なんて発言してたらスコア下げられるんじゃね?と勘繰られても仕方のないところな気がします。スコアリング基準が明示されており、ユーザが自分自身で検算できたりするならまだマシですが。
これまでクレジットカード会社、消費者金融、銀行等が占有していた信用スコアリングや貸金業に、他業種からの参入がしやすくなるというのはメリットなのかも知れません。
しかしノウハウのない企業や、遵法意識の低そうな企業には参入して欲しくないと思うのは私の心が狭くトレンドに追い付けない老人なんでしょうかね。CICに誤った延滞情報を大量登録しておいて知らんぷりのソフトバンクみたいな企業は願い下げです。
中国ではこうした信用スコアが普及していて、スコアが高いほど不動産契約や就職活動などで優遇される仕組みが広がっているということです。
中国ではAlipayの展開する信用情報スコアリングサービスで高得点を取れないと色々不便を被るそうです。Alipayには芝麻信用という付随する機能があり、以下の5項目の領域で個人信用情報のスコアリングを毎月行い、このスコアが劣ると与信や金利優遇面で良くない扱いを受けるそうです。
- ステータス・購買力
- 支払履行能力
- クレジットヒストリー
- 交友関係
- 消費における特徴
例えば友達が少なかったり、ケチケチ倹約して貯金してたりするとあまり良いスコアを与えられず、住宅ローンを組むときにも金利の低くないサービスを案内されてしまったりするんでしょうか。
この辺り、別の機会にもう少し掘り下げて紹介します。
ともあれ、スコアリングが行き過ぎるとこの様な管理社会とも言える息苦しい社会の到来も現実的にあり得るという事、スコアリングを行う企業が絶大な力を持ちうる事、これらがリスクであると言えるでしょう。日本じゃまだまだそうなりそうもないですが。
おわりに
今回はNHKの報道による、「LINE」の信用情報スコアリングや貸金業参入に関するお話、スコアリングが行き過ぎる場合の問題点などについてのお話でした。
最後まで読み進めていただき、ありがとうございました。