今回はクレジットカード入会審査の際に行われる自動審査システムによる、「スコアリング」の詳細について書いてみたいと思います。
昔と異なり、現在ではクレジットカード入会申し込みの審査は、ほぼコンピュータで自動化された審査システムによって行われています。人間の審査担当者が行う審査は全体の1割もあるかどうか、と言ったところです。元々コンピュータが得意としている領域なので、この流れは必然であると言えるでしょう。
- 基準が明確な作業
- 速度と正確性が求められる作業
こうした作業は人間がやるよりも、作業の仕組みとなるプログラムを動かしてコンピュータにやらせる方が圧倒的に高速で高精度なデータが上がってきます。また、人間が行うよりも判断のブレや恣意性も排除されますね。簡単に言えば、担当者ごとに異なる判断をされたりすることもなければ、審査作業のミスも減りますし、更に作業完了までの時間が圧倒的に短いです。また、申込用紙に書かれた内容を人間が一枚一枚チェックするよりもはるかに人件費が安く抑えられます。
ここからはコンピュータに任せることで劇的に高速化したと言われる「スコアリング」の実態と「採点基準」について見ていきましょう。
自動審査の要であるスコアリング
スコアリングは一言で言えば、クレジットカード申込みをしてきた人の属性に点数を付けるために行います。スコアリングの要素は以下の三点です。
1. 属性
2. 自社におけるクレジット・ローン利用状況
3. 他社における借入状況・支払い状況
これら3つの要素から「採点」を行うわけです。
1. 属性
多数の項目をそれぞれ一定の基準に沿って採点します。
年齢
18歳~22歳までは学生であれば両親が健在である限り、23~28歳ぐらいまでのサラリーマンと同等ぐらいのスコアである傾向にあります。何かあれば両親が立替えてくれるから、という理由から高めに付けられる場合が多いようです。
23歳~60歳までは年齢が高いほどスコアが少しずつですが高くなっていきます。ただしまともなクレヒスがあれば、という条件が付いてきます。クレヒスなしの場合、いわゆるスーパーホワイトと区別が付かなくなり、破産経験者と取られて大きく減点される場合があります。
年収
重要項目の一つ。
しかし、クレジットカード申込み時には源泉徴収票や収入証明の提出を求められないのが一般的です。そのため、カード会社側には直接確認する術がありません。そのため、後述する「職業・勤務先・勤続年数」と合わせての評定になります。
下記の関連記事にも書いてありますが、年収を過大に申告すると場合によってはクレジットカード発行後の強制解約などにつながりますので、盛るにしても年収395万円を400万円として申告する程度の盛り方にしておくことを強くおススメします。
※ 本来は一万円単位で申告するべきものです。
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職業・勤務先
これらも最重要項目。
一般的には公務員 >>> 上場企業社員 > 非上場企業社員 > パート・フリーター、といった具合にスコアの高低が設定されています。
大枠として上記の括りがありますが、実際には上場企業の中でもA社よりB社の方がスコアが高い、といった細かい評定も行われている場合があります。
また、公務員と上場企業社員の間には超えられないレベルの壁があります。公務員の信用の高さは別格です。「絶対に倒産しない」、「(反社会的な不祥事でも起こさない限り)絶対に解雇されない」、とクレジットカード会社が見なしているという事になりますね。
特殊カテゴリ「年金生活者・専業主婦(主夫)」
年金生活者はある程度の収入が保証されている立場のため、ステータスカードなどでなければ収入に応じた加点がされる場合が多いです。また専業主婦(主夫)の場合、配偶者の収入に応じて加点が行われる事が多いです。
「多いです」と書いているのは、これら2つのカテゴリに属する方は経済的に自立しているわけではないため、そうした層まで顧客として受け入れるクレジットカード会社であれば加点されるし、そうでないカード会社の場合は加点対象とならない、もしくは審査落ちの対象になり得る、という意味があります。
専業主婦(主夫)の方でも審査通過実績の多いクレジットカード
年金受給者の方でも審査通過実績の多いクレジットカード
特殊カテゴリ「学生」
就職先の内定を得ている場合、一年目のサラリーマンと同等の信用度として勤務(予定)先から想定収入を算出し、それに応じた評価が行われます。逆に、内定が特にない場合は両親の保証を得て入会させるか、そうした学生層を入会させないかで個々のカード会社やブランドごとに対応が異なってきます。
学生の方でも審査通過実績の多いクレジットカード
- アメリカン・エキスプレス®・カード (企業内定済みの学生のみ)
- 楽天カード
- VIASOカード
- ライフカード
- セディナカードJiyu!da!
特殊カテゴリ「自営業者」
判定が難しく、カード会社やクレジットカードの種類ごとに基準が少しずつ異なる様です。
自営業者の方でも審査通過実績の多いクレジットカード
きびしいカテゴリ 「パート・フリーター」
総じて厳しい基準が敷かれています。継続した安定収入という観点からは非常に弱い属性のため、発行してもらえたとしてもショッピング枠30万円以下(いわゆる温情発行)になる事も多い。アメックスはここでも独自路線をひた走り、高収入フリーターであればクレジットカードを発行している事例がありました。
パート・フリーターの方でも審査通過実績の多いクレジットカード
- セディナカードJiyu!da!
- アメリカン・エキスプレス®・カード ※ 年収300万あれば
- 楽天カード
勤続年数
比較的重要なポイントです。優良企業勤務でも勤続年数が1年に満たないと評価はかなり低く、年収1300万円の40代営業マンが転職早々にAmazon Mastercardクラシックでまさかの審査落ちという事例を目の当たりにしたことがあります。その方は外資系企業の海外法人から、別の外資系企業の日本法人へ転職された方ですが、海外暮らしが長く日本国内発行のクレジットカードを持っていない状態でした。そこで営業経費を落とすためのクレジットカードを作ろうとしたわけですが、こうした状況下でも最終的には楽天カードが救いの神になってくれていました。
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話が逸れたので戻ります。
企業や団体に雇用されている方の場合、勤続年数が長ければ長いほどスコアが高くなります。それだけ継続して収入を得てきたという事になるため、信用度が高いという事に。そのため勤続年数が半年に満たない場合はスコアの加点が大きく減少する場合があります。
また、自営業者の場合、勤続年数1年未満だとその事業そのものの継続性に対する信頼が薄い、つまり「その事業で継続して生きていくだけのお金を得ている」とは見なされにくいです。というか、ほぼアウト。自営業の方は勤続年数として出来れば3年ぐらい、最低でも1年以上を目途にクレジットカードに申し込まれる方が発行に至る率は大きく上がるでしょう。それぐらい自営業者に対する評価は厳しいです。
また、自営業の方が勤続年数をごまかした場合、法人化されている場合は登記簿などからバレる可能性があるため、止めておきましょう。嘘つきは社内ブラックリスト行きになる場合が多く、そうなるとその会社でのクレジットカード発行は絶望的に難しくなります。
雇用形態
ご想像のとおりですが、
正規雇用 > 非正規雇用 >>> フリーター、というスコアの高低が設定されています。「収入の継続性」という観点からすれば順当な基準です。
居住形態
この項目のポイントはいくつかあります。
(1) 住居費用 (家賃または住宅ローン支払い) が継続して発生しているか否か
クレジットカード会社によっては、「賃貸・持ち家」のいずれかに〇を付けるパターンだったり、持ち家だったとしても「持ち家(自己所有)・持ち家(家族所有)」まで聞いてくる場合もあります。
(2) 夜逃げの心配
持ち家の方より賃貸住まいの方の方が夜逃げのリスクは高くなります。持ち家 = 資産、でもあるためそれを置いて夜逃げする可能性はかなり低いでしょう(ゼロではありませんが)。
上記の観点から、持ち家 >> 賃貸住宅、の評価になってしまいます。
居住年数
当然ですが長い方がスコアは高いです。今の暮らしを無理なく続けてきた実績になりますので。
家族構成
独身の方の方がクレジットカード支払いに回せる金額が多いからスコアが高そうなのですが、実は逆です。
既婚 (親と同居) >> 既婚 (子なし) >> 既婚 (子あり) >= 独身 (親と同居) >> 独身 (一人暮らし)
独身者は既婚者に比べると転職や転居を自分一人の判断で行えるため、万が一の債務焦げ付きが既婚世帯と比較すると発生しやすいため、です。極端な言い方をすると夜逃げするにも一人でできてしまう、と。。。
また、既婚者や親と同居している方の場合、代わりに支払ってくれる人がいることになるためスコアは高めになります。申込者自身の年収以外に世帯年収を聞いてくるのはそのためです。
※ ただし世帯人数が多いと生活費の分だけショッピング枠など限度額が低めに算定されます。
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固定電話の有無
ないよりは有った方がスコアは高くなります。昨今は固定電話を持たない層もかなり増えていますが、未だに「きちんとした社会人なら固定電話番号を持っているべきである」と考える人も多い(現状、そういう古い考えの方がルールを決めている場合も多い)ので、固定電話を持っていないよりは持っている方がスコアは上がります。
ただし審査への影響はさほど大きくはなく、最低限必ず連絡の付く電話番号が一つ以上あればまずそれで十分と言われています。
自分の信用情報をCICで開示してみましたが、大半のカード会社は私の電話番号を「03-xxxx-xxxx (固定電話) 0x0-xxxx-xxxx (携帯電話)」と二つ並べて登録していました。やっぱり固定電話があればそっちを先に載せるのか、と思いましたね。また、ごく一部のカードはCICへ私の固定電話しか登録していませんでした。確かにそこのコールセンターと電話して本人確認の際の電話番号暗唱で、携帯電話番号を言ったら「その番号ではありません」と言われたんですよね…。Webサービスログインの二段階認証でも固定電話番号しか使えないですし。
2. 自社におけるクレジット・ローン利用状況
現時点で既にそのカード会社発行のクレジットカードを保持した状態で申し込んだり、過去に会員だったカード会社へ申し込んだりする場合、申込者の利用状況や細々した情報がすべて記録されています。
利用状況の良い方であればスコアは高くなり、多重申込みだろうが申し込んだカードが発行される可能性がグッと上がります。何せ「良好な実績あり」ですから。
逆に、過去に延滞を何度も繰り返していたりするとスコアはガタ落ちです。
※ また、カードデスクのオペレータに対して暴言を吐いたり、クレーマーの様に幾度もオペレータと喧嘩したりしていると、危険人物(≒自社ブラック)として登録されてしまう場合があります。クレジットカード発行を自分から困難にしてしまわないよう、オペレータの方には丁寧な対応を心がけておきましょう。
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3. 他社における借入状況・支払い状況
CICやJICCといった個人信用情報機関へ照会をかけて、他社からの借入状況や他社への支払い状況を確認します。また、金融事故の有無や長期延滞による異動の有無を確認します。また、多重申込みの有無もこのステップでチェックされます。
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おわりに
今回は、クレジットカード申込みにおいて必ずと言っていいほど行われている、「自動審査」のシステムがどの様に申込者の属性に対してスコアリングを行うか、その採点基準と注意点についてのお話でした。
最後まで読んで下さってありがとうございました。