クレジットカード国際ブランド (VISAやJCBといったカードブランド) 内の格付けに関する解説記事の第5回、今回はDiners Club (ダイナースクラブ) についてです。ダイナースブランドにおけるカードグレード(格付け)や、ダイナースクラブの成り立ち、歴史的背景から現在の業界における立ち位置などについて解説します。
ステータスカードとしても名高くクレジットカードの元祖とも言われることのあるダイナースクラブカードですが、その詳細について早速見ていきましょう。
「国際ブランド」に関する基礎知識については以下のページをご参照ください。
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JCBやアメックス同様、国際ブランドを運営するダイナース自身がクレジットカード審査・発行業務を担当しています。VISAやMastercardが自身でカードを発行しない点とは大きく異なります。
また、アメックス同様にクレジットカードの利用限度額が原則として存在していません。そして日本上陸当初のブランディング戦略が功を奏したため、今でもステータスカードとして世間一般では広く認知されているクレジットカードです。
そんなダイナースクラブカードについて、歴史を紐解きつつ、どんなグレードのカードがあるのかを見ていきましょう。
Diners Club (ダイナースクラブ) カードの歴史と現状
アメリカでダイナースクラブカード誕生
クレジットカードそのものは、ダイナースクラブカード以前より様々なカードが発行されており、鉄道・運輸・電話・買い物等々の分野では決済用カード (信用に基づく後払い) が存在していました。既に19世紀後半のアメリカにおいて様々な決済用のカードが利用されていたわけです。しかし、これらのカードには国際ブランド決済機能が付帯されていなかったため、現在で言うハウスカード (特定のお店やサービスのみで利用可能な決済用カード) に近かったのかも知れません。
ダイナースクラブがクレジットカードの先駆者として世界初のクレジットカードと呼ばれる所以は国際ブランドを付帯した汎用支払いカードである点でしょう。また、"Diners" の名が示す通り、レストランで使用可能なクレジットカードとして世界初であったと言われています。特にダイナースクラブカードが発行された頃はレストランで使える決済用カードがなかったため、レストランで使える決済用カードの需要が高まっていました。
ダイナースクラブカードはこの需要をタイムリーに埋め、汎用支払いカードの利便性が知られていくことになります。また、当時はダイナースクラブ以外のサードベンダがより使い勝手の良いクレジットカードを発行することで急速に普及したと言われています。今でこそ本体の直接発行しかないと思われがちなダイナースクラブカードですが、当時は提携カードが普及の立役者であったということになりますね。
ダイナースクラブカード、日本上陸
1950年にアメリカで創業されたダイナースクラブカードですが、1960年に日本にも上陸しています。1951年に海外FC (フランチャイズ) 事業を開始し、日本は第24号の進出先でした (第1号はイギリス)。
このときにプラスチックのクレジットカードが日本に持ち込まれ、以後の主流となっていきます。海外ではこれよりも早くプラスチックカードが普及し始めていました。
1960年 、日本ダイナースクラブの設立
日本交通公社 (現JTB)、富士銀行 (現みずほ銀行) の両社が米ダイナースクラブとフランチャイズ契約を締結し、1960年に日本ダイナースクラブが誕生しました。当時は為管法の制限により、国際決済可能なクレジットカード発行を行えなかったため、日本国内専用のカードとしてスタートしています。
日本のクレジットカード発展に大きく貢献したダイナースクラブカード
1962年 : 富士銀行との協力でカード代金自動引落しサービスを開始
1967年 : キャッシングサービス開始
1969年 : クレジットカード付帯保険の取り扱いを開始
1978年 : 日本初のインターナショナル (海外でも利用可能) なクレジットカード発行
現在日本国内で流通するクレジットカードの基本的なサービスはこの頃にダイナース中心に開発が進められてきました。
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~1990年代には富裕層向け、選ばれた人のためのカードとして知られる
日本国内では、バブル期において以下のキャッチコピーがダイナースクラブカードのマーケティングに使用されていました。
- 大人のステータス
- 誰でも持てないから、誰もが持ちたい
- ゴールドよりも、プラチナよりも上のプラスチック
- 日本経済を明るくするカード
- あなたのサインを、みんなが欲しがる
他社カードなんて目じゃないぜ、と言わんばかりのキャッチコピーです。
また、一部は遅れて日本にやってきてゴールドカードという概念を持ち込んできたアメックスに対する強い対抗意識も垣間見えますね。
2000年、米シティグループによるダイナースクラブ買収
長らく独立系という立場にあり加盟店も多くありませんでしたが、アメリカでシティグループに買収されたことにより、アメリカとカナダにおけるMastercardブランドとの提携が実現し、一気に加盟店が増えました。
2007年4月、サービス改訂 (改悪)
ダイナースプレミアムカードのサービスの一部廃止が行われ、平カード (ダイナースクラブカード) へのダウングレードを行う顧客が急増、顧客離れが起き始めます。この時からダイナースの威光が陰り始めたのかも知れません。
2008年、米DISCOVERへの売却
シティグループの経営不振により、ダイナースクラブを含むクレジットカード事業は新興国際ブランドの米DISCOVERへ売却されました。 日本国内ではシティバンク銀行が独占的なフランチャイズ権を持っていたためサービスの運営は何事もなく継続されました。
また、日本国内ではDISCOVER、ダイナースとJCBの相互開放が進み、「ダイナースは使える店が少ない」という欠点を克服しています。
2015年、三井住友トラストクラブへの身売り
米シティグループの不採算部門の売却に伴い、全世界でシティバンクが個人金融事業から撤退。これに伴い日本国内での身売り先として、三井住友トラスト配下の三井住友信託銀行がシティカードジャパンの株式を購入。グループ企業の三井住友トラストクラブがダイナースクラブカード事業を継承し、今日に至ります。
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様々なカード会社が日本ダイナースクラブを欲しがっていた
2015年の三井住友トラストへの事業売却のとき、新生銀行、三越伊勢丹ホールディングス、JCBの三社連合が日本ダイナースクラブ事業の買収に名乗りを挙げていました。
新生銀行 : 系列企業にクレジットカード事業を営むアプラスを擁しています。その後、ハイグレードカード事業のためLUXURY CARDと提携し、日本国内でMastercardブランドの最高グレードであるWorld EliteカードのLUXURY CARDを展開。
三越伊勢丹ホールディングス : 配下にエムアイカードを擁する、大手百貨店。その後、エムアイカード事業の拡大を模索、Tポイントとの提携を経て生き残りをかけてエムアイポイント経済圏の構築を目指す。
JCB : Japan Credit Bureau、日本発の国際ブランドであるJCB本体。世界へ打って出る橋頭保の補完としてダイナースの決済網が欲しかったのかも知れません。
元々、SuMi TRUSTカードという自社ブランドのクレジットカードを発行している三井住友トラストクラブでは、ダイナースクラブの方向性についてやや迷走している様に見えます。ICチップ対応は他社と比較しても遅く、Apple PayやGoogle Payの対応も2019年5月現在で未だに達成されていません。
また、雑誌「GOETHE」web版で他社カードを貶して自社カードを持ち上げるような時代錯誤のマーケティング記事を発表し、批判を浴びて炎上の末記事を削除するといった事件も発生しています。
長い歴史を持ち、日本のクレジットカードの発展に大きな貢献をした老舗ブランドを受け継いだ三井住友トラストカードには、是非ともダイナースクラブカードを立て直して盛り立てていただきたいものです。
2019年、TRUST CLUBカードとのコラボや新サービス開始で巻き返しを図る
サブカード (コンパニオンカード) として三井住友トラストクラブのプロパーカード、TRUST CLUBカードが無料で付帯するようになりました。稀にダイナースブランドで決済できないお店やサービスがあっても安心です。もちろんポイントはダイナースリワードポイントに合算されますし、TRUST CLUBカードの特典も利用可能です。更に、ダイナースプレミアムカードにはマスターカードのブラックカードがサブカードに!?
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Diners Club (ダイナースクラブ)のカード格付けまとめ
ダイナースクラブカード
申込み資格は、「27歳以上である事」。これだけが三井住友トラストクラブのwebサイトに掲載されております。
元々は33歳以上 & 年収1,000万円以上などと言われていたハイステータスカードの一角でしたが、長い不景気の末、27歳以上 & 年収500万円以上、ぐらいに基準が下がってきていました。それでも腐っても鯛とでも言うべきか、格安プラチナカードかそれ以上の属性が審査通過には要求されています。
プロパーカードの年会費は22,000円+消費税。
宣伝文句にもあった、「ゴールドよりも、プラチナよりも上のプラスチック」という言葉のとおり、並のプラチナカードを凌駕するサービスがスタンダードクラスのカードに付帯しているのが特徴です。
ダイナースクラブカードの主要サービス
- ポイントは無期限
- 最高1億円の国内・海外旅行保険
- 国内外1,000か所以上の空港ラウンジを無料利用可能
- 対象レストランの料金1名~2名分無料サービス (ダイナースクラブエグゼクティブダイニング)
ダイナースクラブ プレミアムカード
ダイナースクラブからのインビテーション (招待状) のみで入会可能なハイグレードカードです。ダイナースクラブ発行のブラックカードに相当します。
年会費は130,000円+消費税。
そこらのプラチナカード数枚分の年会費に相当します。それだけに付帯するサービスもまた他社を大きく凌駕する、その名のとおりのプレミアムカードです。
一定以上の資産、社会的地位を持つ人の中からダイナースクラブの利用実績を考慮してインビテーションが送られてくると言われており、狙っていてもなかなかインビテーションが届かないといった声をかつてはよく聞きました。
しかし、昨今では年収1,000万円に満たないダイナースクラブカードの会員にもインビテーションが送られてくるなど、かつてのブラックカードの威光が徐々に薄れてきているとも言われています。
しかしインビテーション送付の基準が落ちてきたとは言え、未だに多くの方にはなかなか手の届かないカードであるのは間違いありません。また、インビテーションを受け取りプレミアムカード発行に至っても、13万円の年会費を払い続ける必要があるため、サービスを使いこなしてカードを維持してこそ真のステータスカードホルダーであるということになるでしょうか。この点はアメックスプラチナも同じですね。
おわりに
今回は、ダイナースクラブカードの歴史、日本のクレジットカード発展への貢献、現在の日本国内におけるダイナースクラブカードの各グレードの審査基準やステータスについて解説しました。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。