数日遅れで恐縮ですが、野田前総務省が激怒していた、ふるさと納税の節度を越えた返礼品で荒稼ぎしていた自治体へ、石田現総務相より鉄槌が下されました。ふるさと納税を利用して他自治体より突出して多い寄付金を集めた四自治体に対し、2019年3月度の特別交付税 (災害分除く) を支給しない旨が公表されました。
- 大阪府泉佐野市
- 静岡県小山町
- 和歌山県高野町
- 佐賀県みやき町
ふるさと納税大好きな皆様なら一度は聞いたことのある名前だ、と思った方も多いかもしれません。いずれも総務省からの要請をガン無視してきた剛の者たちです。実際に本サイトでも紹介したことのある自治体ばかりです。
総務省の措置としてはやり過ぎなのか手ぬるいのか?
今回の石田総務相による措置が妥当なものなのか、ただのパフォーマンスに過ぎないのかを知るためには、地方交付税交付金が一体どんな税金なのか、ということ知る必要があります。
地方交付税とは
地方交付税は、平たく言えば経済活動の活発な都市部から経済活動が活発でない地方への財源の移譲です。ユーロで言えばドイツの稼いだお金を様々な名目でユーロ構成国の中でも経済的に自立できていない、または自立できなくなりそうな国にバラまいているのはご存知の方が多いと思いますが、それを日本国内でやっていると思えば宜しいでしょう。
一部の自治体や都道府県だけがお金持ちになりすぎない様に、産業や経済活動が活発ではない地域に振り分けています。こうして地方公共団体が財源を確保できるわけですが、黙っててもカネがもらえることにもつながるためコスト意識の低い地方自治体が後を絶たないという問題もはらんでいると考えています。
地方交付税の原資は我々の納めた税金
地方交付税の原資の内訳は以下のとおりです。当たり前ですがすべて税金で賄われています。
- 所得税の33.1%
- 酒税の50%
- 法人税の33.1%
- 消費税の22.3%
- 地方法人税の100%
太字はサラリーマンの方でも支払っている税金になります。自分が払った所得税や消費税を計算してみると、その内いくらが地方交付税交付金に化けているかが分かります。毎日マジメに働いている方で不交付団体にお住いの方の中には、ちょっぴり腹が立つ方もいるかも知れませんね。
普通交付税と特別交付税
地方交付税には「普通交付税」と「特別交付税」があります。今回交付対象外とされたのは「特別交付税」の方です。この二つの違いを見ることで、実際に「やりすぎ自治体」にどの程度のダメージがあったのかが分かりますね。
普通交付税
- 地方交付税の総額の94%が普通交付税として交付 (支給) されます。
- 日々の行政運営に必要な資金として、財源不足額に応じて算出された額が交付されます。
- 財源が不足していないと見なされた地方公共団体には交付されません。
- 発電所、防衛関連施設があると不交付団体に (別途支給があるため)
- 大規模航空・港湾施設・大企業の事業所や工場があると交付されない場合があります (経済活動が活発であり税収が期待できるため)
今回槍玉に挙げられた、以下の四つの自治体はいずれも地方交付税交付金を受け取っている地方公共団体です。94%は今まで通り支給されていると考えれば大したダメージにはなっていないことが分かりますね。そもそも国内の話なのでダメージ与えちゃいけないんですが。
- 大阪府泉佐野市
- 静岡県小山町
- 和歌山県高野町
- 佐賀県みやき町
特別交付税
- 地方交付税の総額の6%が特別交付税として交付されます。
- 普通交付税で勘案する対象外の事案や、災害などの緊急性の高い個別事案による突発的な財政難に対して交付されます。
「一月分の内、6%ぐらい減っても大丈夫だよな!お前らガッポリ稼いだもんな!」、という事でしょうか。
確かに人口を考慮しても数十億円~数百億円の寄付金を集めていれば財政的には問題なさそうな気がします。実際に自治体の手元に残るお金は五割前後と言われていますが、ふるさと納税で稼ぎまくっていれば、0.50% (6%÷12か月) 程度の年収減など痛くもかゆくもなさそうです。仕入れ値の2倍~3倍の価格で転売を行い、その業務を元々雇用している従業員にやらせるようなものなので、ふるさと納税ポータルサイトにぼったくられていない限りまずプラスになっているものと思われます。
すごく雑に言うと、年収1,000万円のサラリーマンが5万円減給されたものの、副業で200万円ぐらい稼げておりトータルでは大きくプラスになっている状況じゃないでしょうか?
地方交付税と利益相反するふるさと納税という問題点が浮き彫りに
もう想像の付いた方も多いと思いますが、地方交付税を受け取っていない、いわゆる不交付団体の住民がふるさと納税を行うと本来得られるはずだった住民税が外部へ流出しダイレクトに収入が減ります。ふるさと納税に伴う税収減は地方交付税によって補填してもらえません。
つまり、不交付団体が一方的に搾取されるという構図が生まれます。
現に、東京23区、特に杉並区などはふるさと納税による税収減少が続くと、保育園などの施設を新たに開設することが困難になるため、ふるさと納税を控えるよう総務省へ抗議しています。今の制度だと庶民は聞く耳持たないと思いますが。
地方へのバラまきは正しい事なのか
いくら税金を地方に注入してもそれを地方公務員のボーナスの原資にしちゃったり、一部業者との癒着ともとれるような杜撰な業者選定で意味のないハコもの作ったり高速道路作ったりしてても、自分で稼げるようにならないと意味がないと思うんですよ。ふるさと納税で美味しい思いしてるトンキン野郎が何言ってやがる、と思われるかもしれませんが。
ふるさと納税なんて廃止して地方で起業する人への補助金にでも充てるのもアリじゃないかとも思います。起業に失敗した人を破産者マップなんて作って叩きまくる人が多い社会では恩恵を受ける人が少なくて難しいのかも知れませんが。
それでもふるさと納税が好き!~やりすぎ自治体への寄付は止められない~
一粒で三度おいしいふるさと納税
昨年までは、ふるさと納税は非常においしい制度でした。自己負担2,000円で、以下の三点がもれなくもらえていたからです。
- ふるさと納税返礼品
- 寄付金支払いのクレジットカードポイント
- ポータルサイトからのポイントバック
私事になりますが、2018年のふるさと納税では、返礼率50%の「近畿日本ツーリスト旅行券」を5万円分ほどいただき、無事に現金47,000円に換金できました。共働きの配偶者も、返礼率40%のAmazonギフト券をいただいておりウハウハでした。敬老事業の予算確保にしか精を出さない東京都某区の行政の皆様へのささやかな抵抗です。自己負担2,000円で数万円分の節税が出来たので有難い話ですが、これが今年から無くなると思うと残念無念。
・・・と、高尚なことを言ってみましたが、居住自治体へのふるさと納税も出来ず、ふるさと納税で寄付しないと一方的に損をするような制度設計になっている以上はやらないわけにいかないのです。私の様な貧乏人にとっては。
自己負担金2,000円でバラまきに使われる税金を取り返し、ついでにクレジットカードで寄付金支払ってJALマイルゲットだぜ!さらに ふるさと納税サイト「ふるなび」 で寄付して寄付金の1~2%分のAmazonギフト券もゲットだぜ!!
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やりすぎ自治体の輝かしい(?)返礼品の数々
最後に、何度も槍玉に挙げられていたやりすぎ自治体の返礼品を、過去の記事と共に振り返ってみたいと思います。
最新型iPad Pro、アメックスギフト券、Amazonギフト券、もう恥も外聞もあったもんじゃありません。地元の業者が取り扱っていれば地場産品扱い、であればヨドバシカメラなど家電量販店を擁する地域は海外メーカーのスマホもノートPCも返礼品にしちゃっていいことになりますし。いっそ居住自治体へのふるさと納税可能にして、東京23区も全力でなりふり構わず税金争奪戦に参加していただきたいとも思ったりします。
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おわりに
今回は、前々から「やりすぎ」を指摘されていた、過剰返礼品でふるさと納税の寄付金を荒稼ぎしていた4つの自治体がついにお仕置きを食らい特別交付税が不交付になったというお話、背景を理解するための地方交付税に関する簡単な説明、ふるさと納税の在り方に関する考察、でした。
今回も最後まで読み進めて下さりありがとうございました。