クレジットカードを持っている人が転職したり、子会社・関連会社へ出向したりして所属会社が変更した場合、クレジットカード会社はどのようにしてカード会員の転職や出向の事実を知るのでしょうか?
また、自己都合による自発的な退職やリストラなどによる会社都合の退職で一時的に無職になった場合でもクレジットカード会社はどうやってその事実を知るのでしょうか。また、そういった事実をカード会社に知らせることで、クレジットカード会員が何らかの不利益を被ることはあるでしょうか?
今回は転職や失業の際にクレジットカードを持っている人ならやっておくべきことを解説します。最近転職したばかりという方や、これから転職しようとしている方も是非読んでみて下さい。
転職・失業時の在籍確認は行われないが、自発的に情報を共有しておこう
転職や失業による勤務先の変更情報は共有されない
- 転職
- 起業・独立
- 失業
さまざまな理由でこれまでと勤務先が変わるということが起こり得ます。しかし、例えば転職したからと言ってクレジットカード会社からの在籍確認は一切行われません。
皆様が勤めている企業やバイト先は、皆様が持っているクレジットカードについて何も知りませんし、それを知らせる義務もありません。そのため、勤務先企業がいちいちクレジットカード会社に、「〇〇さんは10月31日で退職しました」などといったことをカード会社をはじめとする金融機関へ知らせることはありません。
転職、起業、失業のいずれにしても、クレジットカード会員が自発的に何らかの手段でクレジットカード会社へ知らせない限り、クレジットカード会社が会員の転職などによる勤務先の変更を知ることはありません。
何らかの手段、と回りくどい書き方をしましたが、具体的には以下の二つに絞り込まれると思います。
- クレジットカード本人の申告
- 途上与信によって、転職後のクレジットやローン契約 (転職先の社名記載) をクレジットカード会社が発見する
上記の2パターンについて後述しますが、いずれがリスクが高そうかというのは想像が付くと思います。
勤務先の変更については早めに通知するべし
一応、クレジットカード会社は会員の皆様を信用した上で、「立替払いしてくれるカード」を会員に預けているので、出来るだけ早めに勤務先の変更情報は出しておきましょう。遅くとも二カ月以内には通知しておきたいところ。
結婚などによる氏名変更や転居による住所変更はすぐに知らせる方が多い一方で、転職による勤務先変更をすぐに知らせている方はあまり多くないようです。
保有クレジットカード会社のすべてにきちんと通知しよう
例えば、あなたが零細ベンチャーののトーマスカンパニー(株)から業界大手のフルブライト商会(株)へ転職した場合、新しい勤務先であるフルブライト商会の住所、大まかな従業員数、見込み年収などといった情報を通知する必要があります。
三井住友カード、三菱UFJニコス、楽天カード三社のクレジットカードを持っている場合は、その三社すべてに通知しておく必要があります。
例えば、楽天カードへの通知を忘れてしまった場合のケースを考えてみましょう。
- 三井住友カードの登録情報 : あなたの勤務先 フルブライト商会(株)
- 三菱UFJニコスの登録情報 : あなたの勤務先 フルブライト商会(株)
- 楽天カードの登録情報 : あなたの勤務先 トーマスカンパニー(株)
こんな状態で楽天カードの途上与信を受けたらどうなるでしょうか。突然解約されたりはしないでしょうけれど、あまり良い印象を与えることもないでしょう。
転職後に申し込んだクレジットカードの審査への影響
勤務先変更に関する情報を自分が持っているクレジットカード会社へ通知しないままで、転職後にクレジットカードを新しく申し込むと、審査にあまり良い影響は無さそうです。
- 三井住友カードの登録情報 : あなたの勤務先 トーマスカンパニー(株)
- 三菱UFJニコスの登録情報 : あなたの勤務先 トーマスカンパニー(株)
- 楽天カードの登録情報 : あなたの勤務先 トーマスカンパニー(株)
こんな状態で新たにセゾンカードを申込み、「私の勤務先はフルブライト商会(株) です」と申告したらセゾンカード側としては、「あれ?この人本当にフルブライト商会の人なのかな?」という疑問を抱く可能性があります。
各種ローンを申し込んでも同様の疑念を抱かれる可能性があります。
いわゆる申込み時の機械審査においてイレギュラーとして弾かれ、人間による手動審査に回されるでしょうし、クレジットカード申込先から電話がかかってくるか、運が悪いとそのまま審査に落とされる可能性があります。
新たにクレジットカードやローンを申し込む意思のある方は面倒でも時間を作って、転職先や新たな勤務先の情報をクレジットカード会社や金融機関と共有しておくようにしましょう。
病気や転職活動で一時的に無職になった場合は?
平均的な収入がある状態でクレジットカードを持っている方が一時的に無職になるぐらいであれば大抵は問題はありません。あくまで一時的に、です。これまで支払い実績がしっかりしており、就職して継続的な収入を得る意思がある方であれば半年程度の離職期間はまず問題視されません。しばらくの間は貯蓄もあるでしょうし、一度信頼関係が出来ていれば多少の離職期間があろうが利用代金をきちんと支払っている限り問題ありません。わざわざ無職であることを申告しても、カード会社によってはデメリットの方が大きいでしょう。
これはあくまで平均的な収入のある企業や団体にお勤めの方の話です。一般的に収入が高くないとされる企業に勤めている方や収入が高くないとされている職業の方の場合はその限りではありません。カード会社は大抵帝国データバンク等と契約しており、カード会員の勤め先と年齢や勤続年数から概ねの収入を推測しています。職業や収入、持ち家の有無や扶養家族の有無も加味されて最終的に『この人は無職になってもしばらくは大丈夫だろう』、『無職になったら返済が滞る前にクレジットカードを停止するべきだ』、といった判断が下されるでしょう。更に、自社のカード会員を減らしたくない大人の事情が絡む時期といったものもあるので、判断基準は各社さまざまです。
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長くなりましたが、大抵は無職になってもきちんと就職する意思があれば数か月は申告しなくても問題なし、無職になって支払いに困窮しそうなら早めにカード会社に相談するのが吉です。また、転職によって大きく収入が下がる場合ですが、収入はカード利用限度額の算出にも大きく影響するため、素直に申告しておいた方が良さそうです。虚偽情報に基づいたクレジット契約とならない様にするのが肝要です。
ただし、無職なのに前職の勤務先名を出してそこの従業員と偽ってクレジットカードを発行してもらったり、ローン契約を結ぶのは厳禁です。身元を偽ってクレジット契約を結ぶと即時解約になる場合もありますし、危険顧客としてそのカード会社の社内ブラックリストに永久登録される可能性さえもあります。社内ブラックリストに載ってしまうと5年どころか10年、20年とそのカード会社でクレジットカードを発行できなくなる可能性があります。
おわりに
以下、本記事のまとめです。
まとめ
- 転職したら早めに手持ちのクレジットカード会社へ申告しましょう
- 病気や転職での一時的な無職は問題なし、きちんと就職する意思があれば良い
- 大きく収入が減る場合は申告しておく
- 前職の名前を出して虚偽申告によるクレジット契約は厳禁!
やはり一般論から言っても、クレジットカード会社と会員との相互の信用に基づいてクレジットカード契約が締結される以上は、属性情報に変更があった場合は早めの申告が基本になります。
実情を踏まえても半年以内には忘れずに転職したことを申告しておくがの良さそうですね。