今回は、「クレジットカードがなぜ金融機関以外の名前で発行されるのか」という何気ない疑問について、その理由を書いてみたいと思います。
まず、クレジットカードには、VISA、Mastercard、JCBやアメックスといった「国際ブランド」が自身で発行している「プロパーカード」、国際ブランドから発行ライセンスを得たクレジットカード発行会社 (イシュア) が審査・発行するカードがあります。
また、イシュアが発行しているカードには、イシュア自身の名を冠した「プロパーカード」、本来クレジットカード発行業務を行っていない各種企業・サービスと提携してそれらの名を冠した「提携カード」があります。
なぜわざわざ「提携カード」が作られるのでしょうか。この点についてお話します。
「提携カード」は提携企業の収益拡大を目指すために作られる
いきなり答えを書いてしまいましたが、「提携カード」は提携企業の収益拡大を目的として作られます。「そんなの当たり前じゃないの?」と思われるかも知れませんが、提携企業側にもイシュア側にも様々なメリットがあるのです。
提携企業側のメリットと、イシュア側のメリットをそれぞれ説明しましょう。
提携企業・カード会員双方にとってのメリット
提携企業ならではの独自キャンペーンを展開し、提携企業は顧客の囲い込み、カード会員はお得なお買物が出来る
これが一番大きなメリットと言えるでしょう。
提携企業のクレジットカードを使って支払いをすると「〇の付く日はポイント2倍」、「〇〇日は表示価格から5%OFF」などのキャンペーンを見かけたことがあると思います。こうした提携企業独自キャンペーンを、クレジットカードを通して行えるようになります。キャンペーンの原資は基本的に提携企業持ちになりますが、キャンペーンを通して顧客へアピールを行い、提携企業の集客を改善します。
カード会員に対して、お得なセールやキャンペーン情報を流す経路も得られるため、顧客の購買意欲をより効率よく刺激する情報を発信可能になります。
また、クレジットカード会社側としても自社クレジットカードによる決済額が増えることが見込まれるため、収入増加を見込んで提携カード発行、となるわけです。
例.1) LOFTカード
毎月の月末の金土日曜日の3日間、LOFTカードで支払うとLOFTでのお買物の支払金額が10%OFFになります。LOFT好きな方や、インテリア・小物を買おうとしている方に対する強烈なアピールを行いより多くの集客を目指すわけです。年会費永年無料で、LOFTとクレディセゾンの提携により発行されています。
例.2) AOYAMAライフマスターカード
「洋服の青山」でのお買物で、このカードで支払うと何度でも5%OFF、会員の誕生月は10%OFFというこれまた強烈なクレジットカードです。「洋服の青山」の集客・売上増への貢献を見込み、年会費永年無料で、ライフカードとの提携により発行されています。
例.3) ペルソナSTACIA・アメリカン・エキスプレス・カード
阪急百貨店・阪神百貨店のSTACIAポイントを貯める為だけに存在するような、最大還元率10%を誇るクレジットカード。高級百貨店では高還元ポイントのカードなどあり得ないという常識を打ち破った局地戦用のカードです。阪急・阪神百貨店でのお買物が多い方なら作って損のないカード。
ペルソナSTACIA・アメリカン・エキスプレス®・カード
・最大ポイント10%還元
・各種プロテクション(不正利用補償・ショッピング返品保障・盗難/紛失補償)が充実。
・入会審査は寛容な模様 (現況重視)。
・国内旅行保険(最高5,000万円)利用付帯/海外旅行保険(最高5,000万円)利用付帯。
年会費 | ポイント還元 マイル換算 | 審査難易度 | 国際ブランド |
14,000円(税別) | 1%~10% | ★★★+ | |
最短発行 | ステータス度 | サービス充実度 | お得度 |
1週間~3週間 | ★★++ | ★★★ | ★★★★++ |
例.4) PARCOカード
発行から1年間、PARCOでのお買物がいつでも5%OFFになります。また、PARCOで年間10万円以上利用することで、翌年も5%OFFになるというAOYAMAライフマスターに負けない強烈なカード。PARCOによく行く方なら持っていて損はないでしょう。年会費永年無料で、LOFTとクレディセゾンの提携により発行されています。
例.5) イオンカード
毎月20日、30日はイオンカードで支払うとイオンでのお買物の支払金額が5%OFFになります。5%OFFならアレもコレも買っておかないと!と財布のひもを緩めさせることで集客や売上増を狙っています。イオンの場合、自社グループ企業に銀行・クレジットカード会社を持っているため、提携カードとは異なりますが、考え方は同じです。
カード発行会社のポイントと自社ポイントの相互交換で、提携企業の更なる集客、カード会員の利便性向上を狙う
クレジットカード利用で貯まったポイントを、自社のポイントへ交換してもらう、またはカード会社のポイントでなく自社ポイントを付与してもらうことで、より自社サービスや商品を購入してもらうチャンスを増やすことが可能です。
これに非常に力を入れている代表例はやはり航空系クレジットカードでしょう。
例.1) ANAアメリカン・エキスプレス・カード
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このカードは、「ANAマイルへ交換可能なポイント」が決済額に応じて付与されます (1ポイント/100円、1ポイント=1マイル)。他社ポイントからの交換では5マイル/1,000円前後の交換率が多い中、1マイル/100円でANAマイルへ交換可能な他、3年に一度の追加費用 (ポイント交換コース) により多くの陸マイラーが頭を悩ませる、「マイルの有効期限」を回避することが出来る画期的なカードです。通常、ANAマイルは3年間有効ですが、本カードでポイント延命を行いゆっくり大量のマイルを貯められます。
例.2) JALカード
JALカードは、カード決済で支払った金額に応じて、直接JALマイルが付与されます。JALカードという企業は未だありますが、現在はカード発行業務のみを行い、審査や集金業務は三菱UFJニコス、JCB、ビューカードなどのイシュア (カード発行企業) が行っており、事実上提携カードと言っていいでしょう (むしろ各提携企業のプロパーカードに近いか…)。
JALカードを持つことで、他カードで決済を行った場合よりかなり効率よくJALマイルを貯められます (最大2マイル/100円)。また、JALカード会員向けの割引や特典も充実しており、気持ちよくJALのサービスを利用してもらうためのクレジットカード、と言って良いでしょう。
しかし提携カードながら、JCBやMUFGアメックスのプラチナ、ダイナースと同格のステータスカードも取り揃えており、数ある提携カードの中でもひときわ「きっちりした」ステータスカードの側面を備えています。
提携企業のメリット
クレジットカードの加盟店手数料を抑制
通常、VISAやMastercardといった国際ブランドの決済システムを利用するにあたって、いわゆる加盟店手数料を支払う必要があります。しかし自社の提携カードであればアクワイアラ(加盟店の集金業務を行う一次クレジットカード会社)へ支払う手数料を抑えられ、決済業務のコストダウンが実現できます。
事業リスクを軽減
多くの提携カードは、三井住友カード、三菱UFJニコスやクレディセゾンといった大手クレジットカード会社が審査・発行・管理業務を請け負っています。提携企業自身がクレジットカード会社を持たずアウトソーシングで済ませることになるため、多くの人員を抱えることもなく、事業リスクも軽減されます。
クレジットカード会員側のその他メリット
上に紹介した以外に、提携企業やそのサービスのファン向けのクレジットカードは、限定デザインのカードフェイスや限定プレゼントなどで、「カード会員の所有欲を満たす」というやり方でクレジットカード会員獲得を狙いに行っています。
進撃の巨人カード
カードフェイスが人気コミック、「進撃の巨人」のキャラクターのデザインになっています。また、限定プレゼントももらえますよ。
UCSカード (ドラゴンズカード)
中日ドラゴンズファンなら作っておけ、と言わんばかりのカードです。
UCSカード (マイメロディカード)
サンリオのマイメロディがカード全面に露出したデザインの、やや人を選ぶかもしれないデザインのカード。ファンの方向けです。サンリオとUCSカードの提携で発行されています。
VIASOカード (ラブライブ!デザイン)
ファンなら大喜びしそうな限定デザインのカードフェイスとプレゼントが異彩を放つ使い手を選ぶカード。ラブライブ!愛がないと審査に落ちるかもしれないと言われていますが、実際どうなんでしょうか。
VIASOカード (マイメロディカード)
サンリオの中で人気のマイメロちゃんは引っ張りだこ。NICOSからも提携カードが発行されています。こちらはサンリオオンラインショップでの買い物で優待がつくファンの実利も兼ね備えたカードです。
クレジットカード会員側のデメリット
提携カードは、提携企業側へ支払うロイヤリティや商標使用料などの関係で、海外旅行・国内旅行傷害保険などの特典がプロパーカードよりも下のランクになっている場合があります。こうしたデメリットを考慮しても、その提携企業のサービスを利用する頻度が高い方にはお得度が高いように調整されている場合が大半ですので、デメリットと言う程のものではない場合が大半です。また、国際ブランド (VISA, Mastercard, など) の種類が限られている場合も多いため、国際ブランドに強いこだわりのある方、「自分はJCBとアメックス以外のカードを使うと蕁麻疹が出るんだ!」という様な方は注意しましょう。
おわりに
今回は、なぜ世の中のクレジットカードにかくも多くの「提携カード」が存在するのか、というお話でした。以下、箇条書きで内容をまとめます。
- 提携企業は集客・売上増加を見込める
- クレジットカード発行会社 (イシュア) は決済高の増加を見込める
- 提携企業側は大きなリスクを取らず、コスト削減も兼ねた収益増加を狙える
- ◎ … クレジットカード会員は、提携企業からのカード会員限定キャンペーン等でお得な割引や優待を受けられる
- ◎ … クレジットカード会員は、一般客よりもポイント還元で有利な場合が多い
- 〇 … クレジットカード会員は所有欲を満たせる限定品をゲットできることも
- △ … プロパーカードと比較して、保険などの付帯特典がワンランク下のこともある
- △ … カードの国際ブランドが限定される場合もある
最後まで読んで下さりありがとうございます。