今回は久しぶりにクレジットカードの手数料のお話です。残念ながらあまり知られていない事項として、「ランチはカード決済お断り」、「クレジットカード手数料○%上乗せ請求」や「クレジットカード決済のみ値上げ」はクレジットカード会社との加盟店規約に明確に違反する行為です。しかしながら未だにまかり通っており、多くの飲食店や小売店が加盟店規約違反による収入をあげていると言える状況です。
参考記事
クレジットカード手数料を要求されても払う必要はない
以前の記事(「クレジットカード会社はどうやって利益を出しているのか」)で、クレジットカード加盟手数料について解説しました ...
この件について、最近Twitterで、「クレジットカードを使うための条件を付けるのは規約違反なんだって」というツイートが3万回以上拡散され、話題になっています。この件についてはいくつかのメディアでも取り上げられています。以下は「弁護士ドットコム」からの引用です。
「クレジットカード使うための条件つけるのは規約違反なんだって」。こんなつぶやきが3万3千回以上RTされ(2月9日現在)、話題になっている。この規約を知らなかった人も多く、「ランチ払いでも違反なんですか」「カード払いは電化製品5000円以上お買い上げのみにしか使えませんって言われた」などと反響を呼んでいる。
●店側が制限をかけたくなる「手数料」事情
こうしたお店はよく見かけるが、一方で、加盟店側にも色々な事情があるようだ。
都内でバーを経営する新田さん(40代男性・仮名)は「手数料は結構取られているという感覚がありますね」と話す。
新田さんのお店では、JCB、VISA、ダイナース、アメックス、マスターの5社を導入。月2回の入金で、決済代行会社に8%の手数料を支払っている。カードが使えないとなると現金でツケになってしまうリスクもあることから、店を始めてからすぐにクレジットカードを導入した。現金で管理するコストは「あまり感じたことがない」という。
客の約2割はカードで支払う。カード利用の金額制限は設けていないが、「金額制限をかける店の気持ちも分かります」と一定の理解を示す。「正直、うちでも口頭で言おうかと思ったことはありますね。まぁいっかと思って結局言わなかったのですが…」とこぼした。
●カード会社の規約に違反、「連絡をいただければ是正指導します」
三井住友カードの加盟店規約を見ると、第4条(信用販売) の1項に「加盟店は、会員が、カードを提示して、物品の販売、サービスの提供、その他加盟店 の営業に属する取引を求めた場合は、本規約に従い、現金で取引を行う顧客と同様に、 店頭において信用販売を行うものとします」とある。
同社の広報によると、金額や時間帯によって使用に制限をかけるのは、上記の規約違反となるという。「大手の加盟店の場合は個別で契約を結んでいる例もあるが、中小規模のお店ではない」といい、契約する際に例外を設けているという訳でもないようだ。
また、JCBカードも加盟店規約の第11条2項で、
「加盟店は、有効なカードを提示した会員に対して、商品の販売代金ならびにサービス提供代金について手数料等を上乗せする等現金客と異なる代金の請求をすること、およびカードの円滑な使用を妨げる何らの制限をも加えないものとします。また正当な理由なくして信用販売を拒絶し、代金の全額または一部(税金、送料等を含む)に対して直接現金支払いを要求する等、会員に対して差別的取扱いは行わないものとします」
と定めている。
同社広報によると、店によって別途規約を設けている事例は「原則ない」といい、「こうした店舗に遭遇した場合には、『金額制限はないはずなので、カードを利用したい』旨を申し出ること、また弊社の方から加盟店に是正指導するので、裏面の各カード会社まで連絡してください」と話した。現状では月に平均して20~40件程度、是正指導を行っているという。
●賛否両論が集まる
冒頭のつぶやきはTogetterでもまとめられ、コメント欄では「クレカ使用者がコストを払うべき」「ルールを守れないなら、そもそも導入するな」などと賛否両論が飛び交っている。
確かに街中では、「クレジットカードはお会計総額¥5400(税込)以上からご利用可」「ランチタイムはクレジットカードお断りしています」などと張り紙をしているお店をよく見かける。消費者としてはそもそもこれらは加盟店規約違反ということを、知っておいた方が良さそうだ。
引用 : 弁護士ドットコム
URL : https://www.bengo4.com/internet/n_7403/
加盟店規約違反がまかり通っている現状
「手数料○%を別途もらい受けます」、「ランチタイムはクレジット払い受け付けません」、「○○円以上ならクレジット決済OK」は加盟店規約違反!
一般的にクレジットカード加盟店がクレジットカード会社に支払う加盟店手数料は、安いとは到底言えません。
業種別のクレジットカード加盟店手数料
- 風俗店・キャバクラなど … 7~10%
- 飲食店 … 4~8%
- 小売店・専門店 … 3~5%
- デパート・百貨店 … 2~3%
- 量販店・コンビニなど … 1.0~1.5%
立替え代金回収のリスクが高い加盟店ほど手数料が高い事になります。個人向け無担保ローンの金利が高いのと似た様な理由です。それにしても個人経営の飲食や小売店は確かにきついですね。10,000円の売り上げが上がっても、クレジットカード会社に300円~800円を持っていかれることになります。ただし、「顧客の財布のひもを緩めて購買意欲をそそる」という恩恵にはしっかりあずかっているわけで。美味しいところだけ持っていきたいというのは許されることではありません。
クレジットカード加盟店になる利点
- 手持ちの足らない消費者の「取りこぼし」を減らす (顧客獲得)
- 分割決済やリボ払い可能とすることで、より高価な物品の購入を促す (顧客獲得・顧客単価向上)
- カード決済の方が消費者は余計な買い物をしやすい (顧客単価向上)
- クレジットカード利用者は一定以上の信用を得ている良質な顧客
- カード決済は現金決済と比較してスピーディ(釣銭の準備・受け渡しがない)で低リスク(強盗に入られても現金を奪われない)
- 銀行振込と比較しても、入金確認や振込額間違いの訂正処理(返還や再請求)がないため人件費を抑制可能
- (日本国内ではレアケースになるが) 偽札をつかまされるリスクがない
そんな中、モバイル決済 (楽天ペイ、Air Payなど)が登場し、従来のクレジットカード会社の提示する決済手数料よりも安い手数料でカード決済を受付けるようになりました。また、従来と比較して入金が非常に早い(翌営業日~)ため、キャッシュフローに余裕のない店舗でも導入しやすくなっています。こうした加盟店向けサービスがもっと広まると、今回の記事のトピックである、「加盟店規約違反」も減るのでしょうけれど。
また、J-Debit (いわゆるデビットカード) であれば手数料激安です。
- モバイル決済手数料 … 3.24%~
- J-Debit … 0.2%
例えば、楽天ペイはVISA, Mastercard, アメックスの決済手数料3.24%、JCB, ダイナースクラブ, Discoverは3.74%でクレジットカード決済サービスを提供しています。
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「手数料○%を別途もらい受けます」
風俗店、キャバクラ、ラウンジ、スナックなど夜のお店系でよくあるパターン。一部の良質とは言えない飲食店でも見かけるパターン。しかし手数料上乗せは立派な違反行為。
例えば、上述のニュース記事にあるJCBの加盟店規約にも、
「加盟店は、有効なカードを提示した会員に対して、商品の販売代金ならびにサービス提供代金について手数料等を上乗せする等現金客と異なる代金の請求をすること、およびカードの円滑な使用を妨げる何らの制限をも加えないものとします。また正当な理由なくして信用販売を拒絶し、代金の全額または一部(税金、送料等を含む)に対して直接現金支払いを要求する等、会員に対して差別的取扱いは行わないものとします」
という内容の規約があります。「商品の販売代金ならびにサービス提供代金について手数料等を上乗せする等現金客と異なる代金の請求をすること」を禁止しています。つまりクレジットカード決済手数料を別途徴収することはクレジットカード加盟店規約上NGです。
ちょっと怖いお店などでどうしても手数料を上乗せされそうな場合、「手数料分だけ現金で別決済」、「手数料分だけ別枠の領収書(但し書き : 「クレジットカード手数料として」)を切る」、この二つをやっておきましょう。これを要求した時点で手数料をかすめ取ろうとする加盟店側もお客が何をするつもりか察して手数料上乗せ要求を取り下げてくる事も多いようです。頑なに上乗せ手数料を支払わされた場合、後日加盟店にチクりつつ、上乗せ手数料の返金を求めること(難しいようですが)。クレジットカード会社からの指導が入ったら加盟店側も何かしらの対応をせざるを得ません。加盟店側の自己責任と割り切り罪悪感を抱く必要は特にないでしょう。規約違反を行って不当な利益を上げようとする輩にはそれなりの対処をして然るべきです。
「ランチタイムはクレジット払い受け付けません」
加盟店との契約で、カード取り扱いの金額・時間帯に制限を設けることは禁止されております。 加盟店の業態により事情はございますが、万が一そのような行為があった場合は、加盟店に是正指導を行いますのでカード裏面のカード発行会社までご連絡ください。
引用元 : JCB公式サイト 加盟店で金額や時間帯によってカードを利用できない場合があるのはなぜですか? | JCBカード - よくあるご質問 (個人・法人)
これもアウトです。安いランチで客を集めて、単価の高い夜に来店して欲しい飲食店の思惑も分かりますが、明確な加盟店規約違反です。もしかすると忙しいランチタイムには、クレジットカードの認証エラーなどで時間を要してしまうとレジが詰まってしまうことを懸念しているのかも知れませんが、それも店側の都合であって客に負担を押し付けて良いことにはなりません。
「○○円以上ならクレジット決済OK」
「加盟店との契約で、カード取り扱いの金額・時間帯に制限を設けることは禁止されております。」と上述のJCBのFAQページに記載がありますのでこちらも禁止行為ですね。クレジットカード決済されて利益が減って困るなら値上げすれば宜しい。値上げで客が来なくなるならその程度の店でしかない事になります。クレジットカード利用を前提としたプライシングも加盟店側のお仕事じゃないですかね…。
また、加盟店側もクレジットカード手数料を下げるための努力を行っているケースが多いです。前述の楽天ペイの様な手数料の安いアクワイアラへ乗り換えていけば良いだけの話じゃないでしょうか?いつまでも現状維持で同じ収入が得られるとでも思っているのでしょうか…。
その他の加盟店規約違反行為
- クレジットカード払いを申し出た客に対して、現金払いへ切り替える依頼をすること
- クレジットカード払いを申し出た客に対する、露骨な嫌悪感を示すこと (嫌な顔をしたり文句を言ったり愚痴を言ったり)
家電量販店で行われているグレーな販売業態
家電量販店でよく見かけるのが、「クレジットカード決済だと付与されるポイントが減りますよ」というやつ。販売金額が異なるわけではなく、あくまで家電量販店の発行するポイント付与の問題になるので規約違反には該当しないという捉え方も出来ます。一方で、「現金支払い客と待遇に差をつけるな」という加盟店規約の基本的なガイドラインに違反しているようにも取れます。大口顧客である家電量販店にはカード会社も指導しづらいのかも知れません。
例えばヨドバシカメラでは、現在はカード決済でも10%のポイントが付与されますが、過去には現金もしくはヨドバシカメラゴールドポイントカードプラス (= ヨドバシ発行クレジットカード) での支払いのみ10%ポイント付与、その他クレジットカードによる決済ではポイント8%付与という時期がありました。今はそうでなくなった様ですが。
また、いわゆる「現金特価」。現金で支払ってくれる場合のみ更に○%引きますよ、というやつです。現金特価はかなりグレーだと思いますが、「カード支払いの場合は値上げしますよ」というのとは厳密には異なることもあり、どうやら黙認されているようです。
加盟店規約違反の飲食店の多い(?)地域
あくまで個人的な体験に基づく情報です。
日本橋人形町や日本橋浜町といった地域では、かなり堂々と加盟店規約違反を行っている飲食店が多い様に感じられます。代表的なのがランチタイムのクレジット決済拒否と○○円から、という金額制限。稀に手数料を要求してくる猛者もいます。いずれも中小規模の飲食店です。中には店舗前に、「クレジットカード手数料8%」などと書かれている店もありましたが、それって「自分の店の信用度は低い評価を受けています!」、と暗に宣伝していることになるので止めた方がいいと思うんですがね…。因みに、もし実際の決済手数料が例えば5%なのに客から手数料を8%も取っていたとすればかなり重大な規約違反として取り扱われると思われます。
なんにせよ、「一般社団法人日本クレジット協会」のおひざ元の人形町でそこまでやらかすのはなかなかいい度胸です。
一部のお店はそうした行為が加盟店規約違反であると知らずにやっていそうなのですが、規約違反であると承知の上で手数料上乗せを試みている店も多そうです。嫌ならカード決済自体止めてしまえばいいと思うのですが、これって暴論なんでしょうか。せめてカード会社と手数料値下げ交渉するとか、楽天ペイの様な手数料の安いアクワイアラを使うといった努力ぐらいして欲しいです。
おわりに
Twitterでの投稿に端を発したクレジットカード手数料に関する議論が様々なメディアで取り上げられたこともあり、今一度カード手数料やカード決済拒否に関する情報をまとめてみました。皆様の参考になれば幸いです。