2017年上半期のクレジットカード取扱高で楽天カードがついに日本で首位に立った、というニュースが2018年1月10日に流れました。覚えている方も多いと思います。今回は業界全体の取扱高の推移や、楽天カードのシェアの伸び率、業界全体の各社のシェアなどについて、ひと月前のニュースを分析してみたいと思います。
因みに日本で首位ということは、クレディセゾンや三井住友カード、三菱UFJニコスを抜いたということになります。勢いが止まらない楽天カード。テレビCMなどで知名度を上げて急激にシェアを伸ばし続けていましたが、名実ともに「日本で一番使われているクレジットカード」に成長したことになります。
楽天カードマンが急速にクレジットカード業界の勢力図を塗り替えつつあります。やはり年会費無料かつ高還元率カードの重力に魂を引かれる人は多いという事です。
- 楽天カード 公式サイト
楽天カード初の首位 クレジット取扱高3兆円 昨年4~9月 大量のポイント強み 2018/1/10付日本経済新聞 朝刊
クレジットカード業界の勢力図が変わりつつある。楽天グループのカード会社、楽天カードの2017年4~9月期の取扱高は約3兆円に達し、三菱UFJニコスなど銀行系を抜き、自社発行ベースで初めて首位に立ったもようだ。強みはグループ全体で総額2000億円に及ぶポイント付与。今後カード代金のポイント払いも検討する。
楽天カードの穂坂雅之社長が「提携カードを除いた取扱高でトップに立った」と明らかにした。
引用元 : 日本経済新聞 「楽天カード初の首位 クレジット取扱高3兆円 昨年4~9月 大量のポイント強み」
URL : https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25464490Z00C18A1EE9000/
楽天カードの快進撃
2017年4月~9月、上半期で3兆円の取扱高 … ってどれぐらいすごいのか
単独で12%程度の市場シェア
3兆円、という数字だけ見ると何となくすごい気になるんですが、これがどれぐらいのことなのか、統計資料を当たって調べてみました。
「一般社団法人日本クジレット協会」(東京都中央区)という団体が日本国内におけるクレジットカードの取扱高や利用残高の統計を発表しています。それによると、2016年の国内クレジット取扱高は、49兆7259億円です。
楽天カードは上半期だけで取扱高3兆円に達しているので、単純計算で行けば年間6兆円を超える計算になります。
クレジットカード取扱高総額が、
- 2014年 → 2015年で5.6%増加
- 2015年 → 2016年で6.3%増加
- 2016年 → 2017年で6.0%増加 (前2年からの仮定)
2017年を前年+6%の伸びとした場合、52,709,511となり、約52兆7095憶円の取扱高となります。
市場シェアの11.3%程度を単独で占める見込みであることになります。
実際の市場シェアは?
クレディセゾンの決算資料で、毎年各クレジットカードグループ単位での市場シェアを分かりやすく表記してくれています(2016年度統計)。それによると、首位のセゾングループで14.6% (クレディセゾン単体で9.2%、残りがUCや高島屋セゾンなど関連企業)、三井住友FGが14.3%、三菱UFJニコスが13.6%と続き、楽天カードは10.1%で4番手です。
2015年のセゾン決算資料の統計では、首位のセゾングループで15.1% (クレディセゾン単体9.3%)、三井住友FGが14.8%、三菱UFJニコスが14.1%、4番手が楽天カードで9.1%でした。上位3社が軒並みシェアを減らし、減らした分の相当な部分を楽天カードが吸収していることになります。
先の日経記事では「楽天カードの穂坂雅之社長が「提携カードを除いた取扱高でトップに立った」と明らかにした。」とあります。
2015年度(2015年4月~2016年3月)までの情報であることや、クレジットカード取扱高全体の伸び率、そして後述の楽天カードの伸び率を見ても、「グループ単位でなく会社単位でみた場合に楽天カードが首位に立ったのはほぼ間違いないということなのでしょう。
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このペースで市場シェアが推移していくと、早ければ二年以内にグループ単位の統計でも3位に浮上してしまいそうです。楽天カード恐るべしです。
年率20%超えの伸び率
同社が発行するカードがどれくらい使われたかを示す取扱高は前年同期比21%増の2兆9968億円。
引用元 : 日本経済新聞 「楽天カード初の首位 クレジット取扱高3兆円 昨年4~9月 大量のポイント強み」
URL : https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25464490Z00C18A1EE9000/
前年同期比21%増という恐ろしい伸び率です。また、日経の同記事添付の資料によると2012年上期と2017年上期で約3倍にまで取扱高が膨れ上がっています。そりゃ首位にもなりますわな…。
伸び率の源泉は「楽天スーパーポイント」
日経の同期時によると、楽天カードの取扱高を伸ばす最大の要因がポイント付与、とのこと。2016年には年間2000億円分の楽天スーパーポイントを利用者に付与しているそうです。楽天市場での4%還元が取扱高を押し上げる要因であるとのこと。
年間で2000億円もポイントを付与していたらそりゃ加入者も伸びるわな…、と思ってしまいますが、実は楽天市場以外での決済が全体の80%以上を占めており、残り20%弱が楽天市場での決済とのこと。
(参考) 日本国内のクレジットカード与信総額と残高(未返済)
「日本クレジット協会」の統計資料を読んでみると、日本国内の信用供与額(与信の総額)が53兆9265億円、期末時点での信用供与残高(クレジット未返済総額)が10兆227億円であることが分かります。
クレジットカード取扱高総額が、2014年→2015年で5.6%、2015年→2016年で6.3%の増加であることが先のクレジット協会資料からわかりますが、取扱高に比べて与信総額が明らかに早いペースで増えています。楽天カードの快進撃も要因のひとつでしょうけれど、各社とも顧客獲得により力を入れて与信を緩くしているように見えますね。やはり楽天カードの伸び方がそれだけ恐るべきものであるということなのでしょうか。
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グループ単位の日本一も射程圏内か
年率20%という伸びを維持していれば、早々に2位、3位は抜いてしまいそうです。メガバンク系クレジットカードが楽天カードより取扱高が低いということになるということです。問題はこの伸び率を維持できるか、ということですが、伸び率を維持するために常に変わり続けて新しいサービスやモノを出し続けようという姿勢が、楽天カードからは強く見えます。
前回記事でお伝えした、JCBとの提携によるディズニー・デザインのカード導入もその一環でしょう。
楽天カードからディズニー・デザインカード登場!もちろん年会費無料!
人気の楽天カードについにディズニー・デザインのカードフェイスがラインナップに追加されました。「完全オリジナルのデザイン」 ...
ディズニー・デザインカード発行に伴い新規加入者へ大量ポイントを付与するキャンペーンを展開中
※ JCBは国際ブランドとしての取扱高シェアをVISAやMastercardから奪えればそれが儲けになるからこういう提携が出来るんですね。その内、楽天プレミアム・アメリ○ン・エ○○プレス・カード、なんてのが出てきたりするんでしょうか。
ともかく、このままだと最大手のメガバンク系クレジットカード企業グループが楽天カードの背中を追う展開になりかねません。業界地図がどう塗り替わるか、とても楽しみです。
- 楽天カード 公式サイト
楽天カードの(私が勝手に考える)課題
やはり、「ブランドイメージ」ではないでしょうか。
「誰でも審査に通る」、「人前で恥ずかしくて使えない」、などといった印象が一部で未だに根強く残っている様です。特に某巨大掲示板とか。
実際のところ誰でも審査に通るなんてことはなく、途上与信も頻繁に行っており、会員の状況管理はかなり厳しく行っています。支払いが少しでも遅延したら容赦のない強制解約に至ることも少なくありません。簡易審査で済む限度額30万円までのクレジットカード会員ならともかく、与信枠100万円以上の会員に対してはそれ相応に厳しく審査していますよ。
また、人前で使えない…ってのも実際ただのネタでしかなく、楽天カードを使っている人はたくさん見かけます。因みに我が家は楽天カードのポイント(期間限定P含む)と他のクレジットカードポイントを楽天スーパーポイントに合算して、ご飯を作るのが面倒なときのデリバリー代に充てたり、年末年始の贈答品を買ったりしています。贈答品に使える食品ラインナップは楽天市場 > Amazon ですしね。
おわりに
楽天カードの伸び率がいかに激しく、すごい勢いでシェアを伸ばして単体ベースのクレジットカード首位をとってしまったかお分かりいただけたと思います。年率20%で伸び続けてきたら、楽天カード勤務の方たちはさぞボーナスが毎年多いんだろうな、と少し羨ましくも感じてしまったりします。
- 楽天カード 公式サイト
以上、今回は「2017年上半期のクレジットカード取扱高で楽天カードがついに日本で首位に立った模様」という一月前のニュースを少し深掘りして分析してみました。