米アマゾンは現地時間6月10日、クレジット (信用) スコアの低い人向けに、クレジットスコアを改善可能とするAmazon.com限定利用可能なクレジットカードの提供を開始しました。
こちらのカード、"Amazon Credit Builder” と銘打たれていますが、年会費無料ながらAmazon Prime会員向けのAmazon Storeカード同様に、Amazonでの利用で5.00%還元とかなりのスグレモノ。実際にどんな特典があるのか、なぜこの様なカードを発行するに至ったのか、といったあたりをもう少し掘り下げて解説します。
年会費無料のAmazon Credit BuilderカードはPrime会員なら5.00%還元!
Amazon Credit Builderはデポジット式クレジットカード
Credit Builderの概要
まず、Amazon Credit Builderは信用力の高くない人向けのクレジットカードです。信用力に不安のある方でも漏れなく作れるデポジット式のカードです。つまり、預けた保証金と同額までのショッピング枠を得られるということになります。
Amazon.com限定利用であり、国際ブランドが付帯しないことから、実際はハウスカードと言えるでしょう。これまでのAmazon Storeカードがデポジットなしのハウスカードであったのに対して、Credit Builderはデポジットが必要なセキュアードカードの位置付けです。
しかしクレジットビルダーカードってすごい名前ですよね。信用力を構築する、つまりクレヒス修行用カードですよ、というのを前面に押し出しているわけですから。日本だとなかなか考えられません。
デポジットは100 ~ 1,000米ドル
カードの作成時に、100ドルから1,000ドルの預り金の差し入れを求められ、これがそのままショッピング利用枠になります。
先払いではなく、「信用枠の担保」として預けているだけのお金なので、使ったら使った分だけ引落し用銀行口座に入れておく事が必要です。
券面デザインはStore Cardと同一
カード券面で訳アリの人向けのクレジットカードと分かってしまうかも・・・といった不安もなし。券面は暗セキュアードカードであるStore Cardと同一です。見た目での区別も困難で、手持ちのカードがCredit Builderであるかどうかを一瞥して見分けることは難しいので、人前でAmazon収納代行の支払いにCredit Builderを使っても安心ですね。
国際ブランドロゴの位置に堂々とAmazonのカートマークが付いているのが特徴的です。いつか、新たな国際ブランドとして登場してきたりするのでしょうか・・・。
クレジットスコアを改善してもっとAmazonでも買い物してくれ
- Amazonに保証金を差し入れる
- 保証金受領から7日~14日程度でカードが有効化される
- Amazon.comでお買物
- 期日までに使ったお金を支払う
- クレヒス構築
- クレヒスを積み上げて、Amazon Store Card (クレジット) をゲット!
といった流れで、クレヒスを改善し続け、良いクレジットスコアを得て生活を豊かにしましょう、と言わんばかりのロードマップ、"THE ROAD TO BUILDING GOOD CREDIT" なるものも米Amazon.comで公開されています。
実はこれ、特典のひとつでもあるクレジットに関する様々なことを教えてくれるページです。クレジット社会のアメリカならではのサービスです。クレジットスコアによって日常生活の端々で利便性を享受する良スコアの人もいれば不利益を被る低スコアの人もいるためです。
こういったサービスは、一度クレヒスを汚すと這い上がるのがもっと大変な日本でも公開して欲しいものですね。知らずにクレジットカードや携帯電話料金 (実際はスマホ分割購入代金) を安易に踏み倒し、住宅ローンや学資ローンなどが組めずに困り果てる人がまだまだ多い様に、クレジットに関する教育が行き届いていません。
因みにこちらはAmazon Credit Builder発行元のSynchrony Bankが提供しているサービスです。米系の新興金融機関ですね。
- 画像引用 : Amazon.com
セキュアードカードとは
セキュアードクレジットカード (Secured Credit Card) は、金融機関の預金を担保にして発行してもらうタイプのクレジットカードです。
1980年代ごろにクレジットカードの本場、アメリカで登場しました。クレジットスコアが低く、一般の銀行が発行するクレジットカードの審査に通過できない人向けに普及しています。日本国内においてはデポジット型ライフカード(Dp)が実質的なセキュアードカードの位置付けを占めています。
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区別のため、保証金の不要な一般のクレジットカードの事をアンセキュアードクレジットカード (Unsecured Credit Card) と呼ぶ場合もあります。
年会費無料ながら還元率はまさかの5.00%
Amazonでだけ使わせてあげれば5.00%もの還元をしても黒字を維持できるという事でしょうか。年会費無料な上に、Amazon Prime会員であれば、Amazon Credit Builderでお買い物をした際の還元率5.00%で現金のキャッシュバックがあります。PayPayなどの集客イベント以外で5.00%もの還元率を達成するのはかなり難しいです。
カードを作ると10米ドル分のギフトももらえる
大盤振る舞いなのが、Credit Builderを発行するとAmazonで利用可能な10米ドル分のギフトがもらえる点。地味においしいです。
クレヒス修行用と銘打っているだけあり、クレヒス構築に関するサービスも充実
Synchrony Bankによるクレジット教育系コンテンツ以外にも、"TransUnion CreditView" というサービスがあります。こちらは自分の行動 (買い物、支払い等) が自分のクレジットスコアにどの様な影響を与えていくか、という推移をみることが出来るそうです。
信用情報のすべてを提供することになりそうなので、日本で実現するとなると相手を選ぶ必要もありそうで、ハードルが高そうです。
入会可能なのは米国在住の方のみ
実に残念ですが、5.00%還元をもらって美味しい思いを出来るのは米国在住のAmazon.comユーザに限られます。日本ではサービス開始予定も特にないようで・・・。
従来のハウスカードである、Store CardとCredit Builderには両方同時に申し込むことが可能です。Store Cardの審査で否決された場合、Credit Builderに回されるという形態をとります。
Credit Builderでクレヒスを作り上げ、デポジット不要なぐらい信用力があると判断されればアップグレードが可能になり、そのタイミングでデポジットも返金されるそうです。安心ですね。
Amazon Credit Builder発行の背景
既にAmazon Rewardカードやアメックスカード等の通常の提携クレジットカードも、ハウスカードとしてのAmazon Storeカードも発行しているのに、なぜ今回、Credit Builderカードというデポジット式のカードを発行するに至ったのでしょうか。
Amazonがターゲットとしているネット通販利用率の高い20代~30代の若年層は日本と同様に低所得で苦しむ人も少なくありません。この層を選別して優良顧客として取り込みたいのが狙いであると考えられます。果たしてBuildされるCreditとは誰のためのものなのでしょうか・・・。
そう考えると、セキュアードカード (誰にとってsecureかを考えたらすごい名前です) 以外に、サブプライムカードなんてカテゴリのクレジットカードもホイホイ発行されるアメリカらしい、遠慮のないネーミングです。
因みに10年ほど前のサブプライムローンも、大元を辿れば高利回りを欲する保険会社や金融機関がある目的で大きな資金を運用していたために需要が絶えなかったそうです。
その目的とは・・・年金です。
日本もアメリカも若年者が年配者に搾取される構造はあまり変わらなさそうです。
おわりに
今回は駆け足ですが、米Amazon.com発行のデポジット式 (セキュアード) ハウスカードである、Amazon Credit Builderの紹介でした。
5.00%還元とは羨ましい話ですね。
また、クレヒスを構築しなおす手段を年会費無料で気軽に得ることが出来る点など、日本がまだまだクレジット社会としては立ち遅れているのだと感じざるを得ないイベントでした。
そして、社会の根っこに潜む問題には国境がないのかも知れない、と真面目に考えてみる機会でもありました。
今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。