前回の記事では、クレジットカード審査において、申込者が書いた「年収」の数字を、クレジットカード会社側でどの様に扱っているのか、実際にどの程度重要視されているのかといったことをお話ししました。
クレジットカード審査で、自己申告の『年収』情報が審査結果に与える影響とは?
クレジットカード申込み時に必ず記載を要求される項目、「年収」。これが大きければ大きいほど審査には好影響…と思われています ...
今回はこの点についてもう少し突っ込んだ内容を書いていこうと思います。
クレジットカード会社に嘘の年収を申告したらどうなるのか?
クレジットカードを申し込むときに必ず記載が必要になる、「年収」。カード会社はこの情報を必ずしも鵜呑みにせず、勤務先や勤続年数からも判断することについては前回の記事で書かせていただきました。
実際に、各クレジットカード会社には審査システムがあり(自前でシステムを持っているところもあれば、 社外システムへ委託しているところもあります)、申込み者に安定した継続収入があるのかを判断するいくつかの尺度が存在します。
まず審査システム側のデータベースに、様々な企業の年齢や職種別の平均的な収入に関するデータが蓄積されています。外部から買ったデータもあれば自社顧客のデータを統計処理したものもあります。そのため、いちいち申込者全員の勤務先に関する年収を毎回調査することはしません。審査システムによって自動的にスコアリングが行われます。
自己申告の「年収」が本当か?こんな情報を見てチェックしています。
勤務先に関するチェック項目
- 勤務先企業名
- 業種 (製造業・金融・サービス業、etc.)
- 企業規模 (従業員数~100名、~500名、~1,000名など)
- 上場の有無
申込者本人に関するチェック項目
- 勤続年数 (~1年、~3年、といった基準の場合もあれば、入社年月の記載を要求される場合もあります)
- 職種 (営業、企画、技術、事務、etc.)
- 雇用形態 (正社員、契約社員、派遣社員、etc.)
上記の情報を参照しつつ、審査システムが持っているデータの平均値から大きな乖離がなければ、「年収」欄に書いた数字はそのまま受け取ってもらえると思って良いでしょう。
例.1) 申込時39歳、大手銀行勤務 (従業員1,000名以上、東証一部上場)、勤続年数15年、営業職 (課長) のAさんが年収欄に「1300万円」と記載した場合は、そのままの数字で評価してもらえるでしょう。
例.2) 申込時26歳、私立保育園勤務 (従業員10名未満、非上場)、勤続年数5年、保育士のBさんが年収欄に「750万円」と記載した場合は…要審査(虚偽の可能性あり)と判定される可能性が高いと思われます。
企業規模が大きかったり有名企業であればあるほど、特に大企業や上場企業、その他有名企業であればあるほど既存会員や過去の会員の中に類似データが多数存在しています。こうしたデータとも比較が行われ、申告された値と大きな乖離がなければ申告された値でスコアリングが行われます。
そのため中小企業で働いている人には審査がやや不利になりやすい傾向があります(中小企業のデータも行政が公表しているものなど参考値は存在しますが…)。
審査で最も不利な扱いを受けることになるのが、個人事業主や自営業者であるのもお分かりになると思います。
平均からあまりに乖離した年収を記載した場合…
上に書いたとおりクレジットカード会社は年収やそれに関連する属性をもとに入会審査を行い、入会の可否やショッピング枠・キャッシング枠の与信審査を行っています。申告された年収の数字が妥当かどうか、各種統計情報を参照して確認した上で、です。
もうこの時点で、「25歳、非正規従業員、年収900万」などといった、平均から大きく逸脱した数字を年収欄に書くとどうなるか想像がつくと思います。
- 収入の証明になる書類の提出を求められる場合がある
当然こうなります。具体的には、○か月分の給与明細、源泉徴収票、会社発行の収入証明、といった書類の提示を求められる場合があるということになります。
書類を提示した結果、「実は年収860万円でした。キリのいい数値で申告してました。」、といった具合であればほぼ黙認されます。しかし、実は年収450万円だったという場合、そのクレジットカードの申し込みはまず落とされると思って良いでしょう。クレジット(credit=信用)カードなんだから嘘つきを落とすのは当たり前ですわな…。
スポンサーリンク
虚偽の年収を申告して、後日の書類提出によって虚偽が発覚した場合
年収の申告で嘘を書いてカード発行に至ったとしても、審査通過如何に係る重大な虚偽は発覚した場合、即時のクレジットカード強制解約をカード会社側から申し出ることが可能な規約になっていることが大半です。と言うかどこもそうです。
そうなるとそのカード会社で契約しているすべてのクレジットカードに対して、会員資格喪失・クレジットカード強制解約ということになり、クレジットカードが回収されます。分割払いやリボ残債がある場合、当然ながら一括返済を要求されるでしょう。CICにも「完了」としてカードが解約された旨の登録が行われます。
虚偽申告に対するペナルティ
クレジットカード会社によっては、このように収入に関する明らかな虚偽申告で申し込んできた人物や、虚偽が発覚した会員に対して社内システムに存在するブラックリストに登録して、今後一切のクレジットカードやローンカードの申し込みを断るという措置をとる場合があります。
虚偽申告には百害あって一利もありません。
収入に関する書類を偽造すると犯罪です。あなたと家族が破滅するので絶対に止めましょう。
クレジットカード審査に通りたいからといって、収入の嘘をごまかすために嘘の内容を書いた収入証明書類をクレジットカード会社に提出したりすると、以下の罪に問われる可能性があります。
- 源泉徴収票や給与明細 (企業が発行するもの) … 私文書偽造
- 税務署で届出印を受領した確定申告書 (個人作成) … 私文書偽造
- 課税証明、所得証明 (役所発行) … 公文書偽造
偽造に対する罪状は「私文書偽造」・「公文書偽造」
刑法第159条の、「私文書偽造等の罪」に抵触した場合、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
刑法第155条の、「公文書偽造等の罪」に抵触した場合、3年以下の懲役または20万円以下の罰金が科せられます。公務員が作成した書類の偽造はより罪が重くなるんですね。
ここまでは「偽造したこと」に対する罪状です。「偽造した文書を使った」ことに対する罪です。
偽造した文書を使ったことに対する罪状は、「偽造私文書等行使罪」・「偽造公文書等行使罪」
それぞれ、偽造私文書を行使すると刑法第161条、偽造公文書を行使すると刑法158条違反で罪に問われます。
ということで、クレジットカード審査やローンカード審査で収入証明書類を偽造するとこうした罪に問われます。更に、偽造書類で入会した後に返済が出来なくなった場合、詐欺罪の構成要件を満たすため、詐欺罪も適用されます。
また、まともな企業であればあるほど犯罪歴のある人間を雇用することはありません。そのため、仮に不起訴で済んだとしても勤務先に知られたら何か理由をつけて解雇または左遷される可能性があります。今後の人生常にビクビクして過ごすことになります。間違っても偽造文書でクレジットカードやローンカード審査に臨んだりすることを考えてはなりません。
自分は収入が低いんだけど、どうすればクレジットカードを作れるの?
収入に自信がなかろうが、可能な限り正確な数字を収入として申告しましょう。「低年収はお断りだ」というクレジットカード会社など今どき殆どありません。
- 継続した収入があること
- きちんと毎月返済してくれること
この二つが満たせていれば、限度額100万円以下で発行してもらえるクレジットカードはいくらでもあります。代表的な例を以下に挙げておきます。
- 楽天カード
- 三井住友VISAクラシックカード
- セゾン パール・アメリカン・ エキスプレス・カード
- Yahoo! JAPANカード
- ライフカード
- JCB CARD R
- ANAアメリカン・エキスプレス®・カード
また、こうしたエントリーレベルのクレジットカードを使い込んでいくことで、あなたのクレヒスが積み重ねられていくことにもなります。ゴールドカードやそれ以上の上位カードを取得したいと思ったとき、クレヒスの積み重ねは年収以上に効いてきます。少しずつ欲張らずに一歩一歩積み重ねていくことが大事です。
おわりに
今回は、クレジットカードの申し込みの際に記入を求められる、年収の欄に嘘を書いた場合のリスクがいかに大きいかということや、絶対に嘘は書かない方が良いという話でした。皆様のお役に立てば光栄です。