今回は単純なようで複雑な、クレジットカードの利用限度額における、いわゆる「共通枠」についてのお話をしたいと思います。「共通枠」とは何でしょうか?
クレジットカードの「共通枠」
そもそも「枠」とは何を指すのか
はじめに、そもそも「枠」とは何を指すかというところを確認しましょう。
枠とは、クレジットカードの利用限度額を指します。クレジットカードの入会時に会員個々人ごとの収入、勤務先、信用情報に基づいてクレジットカード会社が与信を行うのは本ブログでも何度かお話している通りです。つまりは人それぞれに利用可能な金額が個別に設定されている、ということ。
この枠にも複数種類があり、大きく分けるとショッピング枠とキャッシング枠の二つがあります。
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ショッピング枠とキャッシング枠
ショッピング枠とキャッシング枠は基本的にすべてのクレジットカードに付帯します。特にショッピング枠はクレジットカードの根幹をなす機能で、これがなければクレジットカードではありません。
ショッピング枠
ショッピング枠は、クレジットカードによるお買物や公共料金の支払い時に使用する利用枠で、いわゆる後払いの利用枠です。セブンイレブン、ファミマ、ローソンといったコンビニで買い物をしたり、電気代やガス代などの公共料金の自動引き落とし、Amazonや楽天などのネットショッピングで利用される枠です。カード会社が利用料金を立替えてくれ、カード会員の引落し口座から指定された日に合計利用額が引き落とされます。S枠と略されます。
ショッピング枠には二種類の利用枠が含まれます。
(1) 一括支払い、またはリボ・分割払いで利用可能な枠
(2) リボ・分割払いで利用可能な枠
※ 一般的に(2)は(1)に含まれます。クレジットカード会社によって(1) = (2)だったり、(1) > (2) だったりと設定はバラバラです。
例えばMUFGカードだとこんな感じです。
MUFGプラチナアメックスのS枠は500万円と大きめですが、リボ・分割払いは100万円までとなっています。普通に生活している分にはこれで十分ですが、100万円を超える急な出費 (医療費などでしょうか) にはやや対応しづらいかも知れません。
キャッシング枠
キャッシング枠は、直接現金を借りることのできる利用枠です。C枠と略されます。
これも先ほどの、(1) 一括支払い、またはリボ・分割払いで利用可能な枠 に従属します。つまりキャッシングをすればその分ショッピング枠の利用可能額が減少します。2010年の法改正によりキャッシングは上限額がかなり厳しく審査されるようになりました。やはり不景気で返済不可能に陥った方が多かったのでしょう。
クレジットカードの共通枠とは何なのか?
ようやく本題です。長い前振りでした。
共通枠とは、クレジットカード会社が会員に対して与えるショッピング枠として、複数枚のカードをひとまとめにした利用枠、とでも言うべきものです。
MUFGカードの例
先ほどのMUFGプラチナ・アメリカン・エキスプレスカードの例を引っ張ります。
- ショッピング枠 500万円
- 内 リボ・分割払い 100万円
私が保持するMUFGカード発行の以下のクレジットカードで上記の利用枠をシェアしています。
- MUFGプラチナ・アメリカン・エキスプレスカード
- リクルートカード
- JALアメリカン・エキスプレス・カード
これら3枚のカードで利用可能な合計金額が、一括払いまたはリボ・分割払いで最大500万円、リボ・分割払いで最大100万円、ということになります。
これが共通枠と言われるものです (正式な呼称がないようですがこう呼ばれています)。
※ 三菱UFJニコスの共通枠は本当はもっと複雑なのですが、ここでは分かりやすくするためMUFGカードの共通枠のみを取り上げています。
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三井住友カードの例
三井住友カードから私に与えられた枠は以下のとおりです。
- ショッピング枠 100万円
- 内 リボ・分割払い 100万円
以下のクレジットカードで上記の枠をシェアしています。しかしMUFGカードの場合と異なり、三井住友カード発行の場合はカード単位で上限が設けられています。
- Amazon Mastercard GOLD S枠100万、C枠なし
- 三井住友VISAクラシックカード S枠80万、C枠なし
- ANA TOPカード S枠50万、C枠なし
いずれのカードで決済しても、利用可能額が共通枠の100万円から引かれていきますが、三井住友VISAクラシックでは最大80万円まで、ANA TOPでは最大50万円までしか利用することができません。この辺りの決まりごとはクレジットカード会社ごとに異なりますので注意が必要です。
共通枠制のクレジットカード会社
共通枠を取り入れているクレジットカード会社は多数ありますが、代表的な例としては、
- 三菱UFJニコス
- 三井住友カード
- クレディセゾン
- JCB
などの大手クレジットカード会社があります。
発行しているクレジットカードが数十どころか100種類を超えていることもあり、個々のクレジットカードごとに細かく与信していたらキリがないというのがあるでしょう。また、個々のカードごとの与信を行うとあっという間に割賦販売法の規制に引っかかってしまい、年会費が必要なクレジットカードへの入会を見送らざるを得ない会員が多数発生する、というのも大きな理由であると思われます。
※ 年会費はクレジットカード会社にとって大事な収益源です。
対照的に、アメックスは個々のカード単位で与信を行っているそうです。発行しているカードの種類が多くもなく、すべて年会費有料であるという背景があるためでしょう。
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その他の利用枠
クレジットカード会社によって更に独自の利用枠が設定されていることもあります。
ビューカードの場合
指定商品購入枠、Suica枠とも言われているやつです。会員サイトのView's NETで「指定商品」として設定されている利用枠です。具体的には以下の商品が該当します。
- 新幹線回数券
- 特急・急行列車回数券
- Suicaチャージ
- Suicaイオカード
例えば以前発行されたビックSuicaカードでは、ショッピング枠80万 (リボ・分割80万)に対して、指定商品枠は40万円でした。つまり、Suicaチャージ含めた上記の換金性の高いと思われる商品については最大40万円分しか使えないという事になります。悪い事に使うなよ!という事なのでしょう。
JCBの場合
JCBギフトカード、鉄道回数券、電子マネーチャージに関して、ショッピング枠内で別枠が設定されています。これもやはり換金性の高い商品に関して、悪用防止の観点から利用枠を制限しているものと思われます。
おわりに
意外と分かっている様で分かっていなかったカード会社ごとのクレジットカード利用枠や共通枠制度、ふと疑問に思ったので整理してみました。
今回は、クレジットカードの利用可能枠の種類、共通枠の例示を交えた説明、カード会社ごとの特殊な利用枠などについてのお話でした。
最後まで読んで下さりありがとうございました。