国際ブランド大手のMastercard (マスターカード) が、無料お試しからの自動継続による購入を当て込んだ商法を表立って規制するというニュースがあります。これまで放置されてきたグレーゾーンにマスターカードが切り込んでいきます。
このニュースは1/17(木)頃にGigazineやCNETといったネットメディアで報じられていました。なぜか日本の新聞系メディアはあまり報じていなかったみたいですが、色々と忖度する事情がおありなのでしょうか。
今回はあまり報じられていない、マスターカードによる規制の内容、背景や周囲への影響について考えてみたいと思います。
Mastercard (マスターカード)、自動継続商法に「待った」
今回のマスターカードによる規制ですが、例えば、
サプリの「無料お試し1か月」のサービスを利用した際に、解約方法がよくわからないまま無料お試しがいつの間にか正規サービスに切り替わり、事前登録させられたクレジットカードに支払い請求が届く
といったようなことを防止するのに役に立ちそうです。
Mastercardは商品の無料トライアルに新たなルールを導入し、有料に移行する前に加盟店がユーザーの承認を得るよう義務付ける。スキンケアやヘルスケアなどの物理的な商品が対象となる。
このルールに基づき、Mastercardは加盟店がカード保有者に対し、請求が発生する前に決済金額、決済日、加盟店名、トライアルをキャンセルする手順を記載したテキストメッセージまたは電子メールを送ることを義務付ける。
引用元 : CNET Japan
無料トライアルから有料への自動切り替え、マスターカードが新ルール
当面は物理的な商品が対象
- 当面の対象はスキンケアやヘルスケアなどの物理的な商品
- 請求が発生する前に、「金額・決済日・加盟店名・お試しのキャンセル手順」を明記して加盟店から消費者へ提示することを義務付ける
ポイントは上記の二点です。
残念ながらU-NEXTやニコニコ動画などの月払いサービスについては今回は対象外とのことです。お試しサービス申込み時にクレジットカード情報を登録させ、課金開始日に関する通知を出来るだけしないで消費者がそれを忘れてくれることを期待しているかの様な「無料お試し」の手法はまだしばらく続きそうです。一番チャージバックが多くて面倒なのがこのヘルスケアやスキンケアなど美容関連で実験も兼ねて優先的に着手しているのかも知れませんね。
自動継続商法の規制の背景についての考察
こうした施策を行う背景について考えてみましたが、チャージバック (決済キャンセル) の請求が多く決済キャンセル処理の負担が非常に重かったのであろうと考えられます。膨大な量のチャージバック請求がひっきりなしに届いてしまうと、マスターカードの決済システムへの負担もバカになりません。マスターカードブランドのカードを発行しているイシュア(カード発行会社)もチャージバック請求の度にその請求が妥当なものであるか調査を行うことになるので相当な負担になっているはずです。イシュア、アクワイアラ、国際ブランド間のお金のやり取りについても修正が多数発生することになるため、カード会社にとっても国際ブランドにとってもマイナスがあまりに大きかったのではないでしょうか。キャンセル請求が妥当なものなのか毎回確認するのも手間ですし…
チャージバックとは
VISAやMastercardなど国際ブランド側の規約として、主にカード会員(消費者)を保護する目的で、カード会員の申告に基づいてイシュア(カード発行会社)がカード会員と加盟店間の決済をキャンセルすることです。
カード会員の保護が目的とは言え、カード会員の訴えを一方的に受け入れるわけではなく、その訴えが妥当なものであるかをイシュアが調査することが義務付けられています。
通常は、クレジットカードの不正使用やカード会員が利用実績を否認した場合 (「使った覚えなんてない!」等と) などにチャージバックが行われます。
いっそのこと全部キャンセルしてしまうのが一番楽なのかも知れません。
加盟店がブーブー言おうがきちんと手順踏んだ証拠がなかったら一律キャンセルするぞこの野郎!と。国際ブランドにとって加盟店やアクワイアラは確かに顧客なのですが、それ以上に一般消費者の消費がなければ国際ブランドは生きていけませんので、消費者の味方になってイメージアップも図れるし条件に合致しないチャージバックは一律キャンセルにしてしまえば自社・アクワイアラ・イシュアの無駄な仕事も減ってめでたしめでたし、と。
そんな背景から、根本原因である一部加盟店の自動継続商法を叩こうという動きに至ったのではないかと思います。
消費者 (カード会員) からのキャンセル請求がカード会社に寄せられたら、加盟店側がマスターカードの求める手続きを踏んだことを〇〇日以内に提示しない限り一律キャンセル、という感じになりそうな気がします。
今後の動きについて
マスターカードの今回の施策が、チャージバック請求を減らすなどの効果があったと判断されれば、自ずと規制の範囲が非物理的な商品、つまり情報サービスやインターネット上の各種サブスクリプションサービス等へと広がっていくものと思われます。
また、VISA、JCB、AMEXなど他の国際ブランドもこれに追随することになるのではないでしょうか。イシュアやアクワイアラがマスターカードに流れ込んだりしても困りますし、同等水準のサービスを提供せざるを得なくなると思われます。
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おわりに
今回は、国際ブランドMastercard(マスターカード)の、「無料お試しからの継続課金」に対して大々的にメスを入れ始めたというニュースの紹介と、その背景にある事情について考えてみました。
今回も最後まで読み進めて下さりありがとうございました。