クレジットカードを持つことで提供される代表的サービスのひとつ、「付帯保険」。これは国内旅行や海外旅行にいったときに現地で事故に巻き込まれたり病気になった場合、規約に則って治療費を支払ってくれるものです。
例えば、
- 交通事故に巻き込まれた
- 病気にかかってしまった
- ショッピングでトラブルに巻き込まれた
- ホテルや他人の持ち物を破損してしまい賠償を求められた
こうしたトラブルの当事者になってしまったときに、クレジットカードの付帯保険が救いの手を差し伸べてくれることがあります。アメリカなどが特にそうなのですが、海外では病院は基本的に自由診療なのでバカみたいに高額な治療費を請求されます。盲腸の手術で500万円以上、といった具合です。保険に加入していないと言い値で治療費を支払う事になるため、一発で生活が破綻してしまいかねません。
また、最悪の場合に死亡してしまったり高度障害が残ってしまう結果となった時に多額の保険金が支給され残されたご家族の当面の生活を保障してくれる役割も果たしてくれます。普段はあまり考えないことかもしれませんが、実はクレジットカードの年会費はこうした旅行傷害保険にも充てられているのですね。
今回は、クレジットカード付帯サービスとしての旅行傷害保険についてお話します。自動付帯と利用付帯の違い、海外旅行と国内旅行保険の付帯の違いなどを簡単に説明します。「カードの付帯保険があるし旅行保険は入らなくていいよ」と安易に結論付けるのが危険であるということがこの記事を読むとお分かりいただけると思います。本記事が皆様の知識の一助になると幸いです。
まずはじめに。あなたのカードの保険は「自動付帯」?「利用付帯」?
最も大事なポイントからお話します。それはあなたの手元のクレジットカード旅行傷害保険が「自動付帯」なのか「利用付帯」なのか、ということです。
- 自動付帯:そのカードを所有していれば補償金が支払われる
- 利用付帯:そのカードを使って旅行代金の決済を行った場合にのみ補償金が支払われる
利用付帯の場合、旅行パック代金や航空券の費用、国内旅行なら新幹線費用をそのクレジットカードで支払った場合のみ保険適用となり補償が行われます。家から空港までの電車代をそのクレジットカードで払っていればいい、と言われていたりもしますが、SuicaやPasmoなど交通系電子マネーが普及している以上やや難しい要求になるでしょう。交通系電子マネーにお金をチャージするのに使ったクレジットカードで保険が適用されたりするのかも知れませんが、要確認のポイントです。
大事なのは利用付帯の場合では、「持っているだけでは何の補償もされない」ということです。
クレジットカード付帯保険は複数カード分合算されて支給されるので(死亡保険などは最高額のもののみ支給)、利用付帯保険を使い倒す場合は旅行の工程で往路はA社のクレジットカード、復路はB社のクレジットカードで支払う、と言った風に旅行費用にそれらのカードを組み込む必要があります。はっきり言って面倒です。組み込み忘れたら有事の際の補償がなくなります。それぐらいなら毎回の様に旅行パックで加入を勧められる旅行保険に入る方が精神衛生上マシかも知れません。
海外旅行中の病気やケガでどれだけ吹っ掛けられるか?
海外旅行に行く際に、パッケージツアーを選んだり、旅行代理店経由で航空券を購入すると必ずと言っていいほど海外旅行保険に入ることを勧められると思います。これは旅行代理店自身が売上を増やしたいのももちろんあるのですが、それ以上に事故に巻き込まれたりした旅行者のためです。
海外の治療費は原則として自由診療扱いです。あり得ないぐらい高額です。
- 入院するときに入院保証金を5,000USドル請求される
- 救急車を使うと別途1,000USドル請求
- 相部屋の入院一泊で1,000ドル (個室は2,500USドル以上、など)
- 盲腸手術で50,000 USドル
1ドル105円で考えてみても、上から52万5千円、10万5千円、10万5千円(26万2千5百円)、525万円・・・。入院プラス手術、といったパターンがよくあるでしょうから、骨折などによる入院でも平均的なサラリーマンの年収一年分ぐらいは容易に吹き飛ぶ可能性がある事がお分かりいただけると思います。保険に加入していない場合、日本に帰国した後に借金生活に陥る羽目になったり、最悪の場合支払いきれずに金融事故を起こしてしまうリスクさえもあります。
そのため、海外旅行の際は必ず旅行保険に加入するか、同等の補償をしてくれるクレジットカードを、出来れば自動付帯のものを持つようにすることを強くおススメします。
「自動付帯」なカードを持っていると安心
ということで、「自動付帯」のクレジットカードを最低一枚持っていると安心です。年会費無料カードや格安年会費のカードの中にも旅行傷害保険が自動付帯してくるクレジットカードはいくつかあります。
- JCB CARD R (年会費無料、海外旅行傷害保険のみ)
- セゾンブルー・アメリカン・ エキスプレス・カード (26歳まで年会費無料、海外旅行傷害保険のみ)
- 三井住友VISAアミティエカード (年会費実質無料、海外旅行傷害保険のみ)
- 三井住友VISAアミティエカード(学生) (同上)
- 三井住友VISAクラシックカードA (年会費実質無料、海外旅行傷害保険のみ)
- 三井住友VISAクラシックカードA(学生) (同上)
やはり年会費無料、もしくは格安のクレジットカードには殆どと言っていいほど旅行傷害保険が自動付帯されていません。自動付帯されていてもほぼ海外旅行のみです(頻度が低いため支払い機会が少ない)。
しっかりとした補償を望むのであれば、最低でも年会費が5,000円~10,000円クラスのゴールドカードもしくはそれ以上のクラスのカードをおススメします。
海外旅行保険 & 国内旅行保険が自動付帯な持ってるだけで安心のクレジットカード
- 三井住友VISAプライムゴールドカード (年会費5,000円、30歳まで)
- 三井住友VISAゴールドカード (年会費10,000円)
- 楽天プレミアムカード (年会費10,000円)
- JALカード (ClubAカード以上、年会費10,000円~)
- JCBゴールドカード (年会費10,000円)
- MUFGカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード (年会費20,000円)
これらの国内クレジットカード会社発行のカードであれば、海外旅行と国内旅行同時に自動付帯となるため、気軽な一泊の国内旅行だろうがいわゆる「遠征」だろうが補償が発生します。保険は基本的に自分の負けに賭けるようなものなのですが、いざという時のお守りに一つ持っていると日々安心して過ごせます。
できれば複数あると安心、「自動付帯のクレジットカード」
安心できる目安は傷病・疾病治療でそれぞれ「1000万円」
クレジットカードに付帯する海外旅行傷害保険、実際に活用する機会が多い項目としては疾病治療と傷害治療です。これらについては、とりあえず一通り何があっても安心!と言える目安の金額が1,000万円前後です。
しかしながらクレジットカード一枚当たりでは、一般的なゴールドカードで100~300万円前後、プラチナカードで200万円~500万円程度の疾病・障害治療保険しか付帯しません。一見すると疾病治療・障害治療補償金額1,000万円なんか到底届かないので毎回旅行保険に加入するしかないように見えます。
この点に関する不安を解消する手段として、「別会社発行のクレジットカード複数持ち」があります。
クレジットカードの付帯保険は、個々のカードでカード発行会社やラインナップが異なればそれぞれが適用されます(死亡・後遺障害のみ最高額の保険のみ適用)。つまり、A社発行のクレジットカードとB社発行のクレジットカードで疾病治療や障害治療については合算した補償金が支払われるということになります。こうした理由で複数持ちが効果を発揮することになります。
カード名称 | 疾病治療 | 障害治療 | 家族特約 |
---|---|---|---|
JALカード (ClubA以上のVISA, Mastercard) | 150万円 | 150万円 | 〇 |
JCB CARD R | 100万円 | 100万円 | × |
JCBゴールドカード JALカード (ClubA以上のJCB) | 300万円 | 300万円 | △ |
JCBプラチナカード | 1000万円 | 1000万円 | △ |
三井住友VISAゴールドカード 三井住友VISAプライムゴールドカード | 300万円 | 300万円 | △ |
セゾンゴールド・アメリカン・ エキスプレス・カード | 300万円 | 300万円 | 〇 |
アメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード | 200万円 (利用300万円) | 200万円 (利用300万円) | △ |
MUFGカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード | 200万円 | 200万円 | 〇 |
〇 ・・・本会員と同額付帯
△・・・本会員より少ない額が付帯
× ・・・付帯しない
※ 家族特約については〇=本会員と同額、△=本会員より少ない額、× = 家族特約なし
例) 上の表では、セゾンゴールド・アメックスとJCB CARD Rを持っていれば300万円+200万円=500万円が最大補償額と言うことになります。
この様に異なる発行会社のクレジットカードを複数持つことで、海外旅行時の現地における傷害や疾病治療で思わぬ高額な治療費を請求された際の大きな備えになることが分かると思います。年会費無料のJCB CARD Rだけでも持っていると200万円の積み増しになるので安心ですね。こうしたカードを複数持っていると海外旅行保険に毎回加入しなくても何とかなります。
また、結婚されている方であれば夫婦間で互いが本会員のカードの家族カードを発行することで、傷害・疾病治療補償を1,000万円に近付けることが出来ます。
子供がいる人は「家族特約」を重視せよ!
ではクレジットカード本会員になれないどころか、家族カードの発行も不可能である18歳未満の子供はどうすればいいのでしょうか?お子様のいる方なら身に染みて分かると思いますが、子供はしょっちゅう風邪をひいたり発熱したりと外から病気をもらってきます。病気やケガに対する危険性は子供が一番高いです。この点の対処もしっかりと行っておきましょう。
「家族特約」が付帯するクレジットカードを最低1枚は持つことを強くおススメします。
家族特約とは、病気やケガに対して、「本会員や家族会員以外の家族でも本会員と同等か少し劣るレベルの補償をしますよ」、というものです。ゴールドカード以上のクラスのクレジットカードによく付帯してきます。年会費無料カードに付帯することはほぼありません。もう一度先ほどの表を見てみましょう。
カード名称 | 疾病治療 | 障害治療 | 家族特約 |
---|---|---|---|
JALカード (ClubA以上のVISA, Mastercard) | 150万円 | 150万円 | 〇 |
JCB CARD R | 100万円 | 100万円 | × |
JCBゴールドカード JALカード (ClubA以上のJCB) | 300万円 | 300万円 | △ |
JCBプラチナカード | 1000万円 | 1000万円 | △ |
三井住友VISAゴールドカード 三井住友VISAプライムゴールドカード | 300万円 | 300万円 | △ |
セゾンゴールド・アメリカン・ エキスプレス・カード | 300万円 | 300万円 | 〇 |
アメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード | 200万円 (利用300万円) | 200万円 (利用300万円) | △ |
MUFGカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード | 200万円 | 200万円 | 〇 |
〇 ・・・本会員と同額付帯
△・・・本会員より少ない額が付帯
× ・・・付帯しない
※ 家族特約については〇=本会員と同額、△=本会員より少ない額、× = 家族特約なし
例えばJCB CARD Rは本会員自身の補償は充実していますが家族特約がありません。家族特約が欲しければやはりゴールドカード以上ということになります。また、海外旅行保険については家族特約まで含めて考えると、やはりアメックスブランドのカードがプロパー、開放カード問わず充実している傾向にあることが読み取れます。T&E (トラベルアンドエンターテインメント) を旨とする旅行者向けのカードであることを考えると納得のいく比較結果ですね。
海外旅行に行かれる前にこうしたクレジットカードをいくつかそろえておくと安心です。
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おわりに
今回はクジレットカードに付帯する旅行傷害保険について、
- 自動付帯と利用付帯の違い
- 海外旅行における傷害・疾病治療がどれだけ高額か
- 持っていると安心な「自動付帯カード」の紹介
- 家族特約の重要性
についてのお話でした。