消費税率がついに今年10月より8%から10%へ引き上げられます。それに伴い、軽減税率の導入とともに、消費者負担を和らげて消費を促すための施策としてキャッシュレス決済でのポイント還元が始まるのはご存知の方も多いと思います。
しかし非常に複雑なこれらの制度、ニュースで取り上げられて解説を聞いても、なかなか正確に把握しづらいという方も多いでしょう。今回はキャッシュレス決済でのポイント還元に絞って、概要とそのメリットを解説したいと思います。
一言でいえば、「キャッシュレス決済で2%または5%ポイント還元される制度」
「キャッシュレス・消費者還元事業」の概要
日々、様々なニュースが流れており混乱しがちですが、ポイントは以下の点です。
まとめ
- 2019年10月1日~2020年6月30日までの9カ月間限定
- 5%または2%のポイント還元
- 税込支払い金額に対する割合で還元される
- キャッシュレス決済がポイント還元の必須条件
- ポイントをもらうにはクレジットカード、デビットカード、QRコード決済、電子マネーのいずれかが必須
- ポイント還元上限はカードごとに毎月15,000円
このポイント還元事業の正式名称は、「キャッシュレス・消費者還元事業」といいます。2019年10月1日の消費増税に伴う景気対策の一環として実行されます。
実施期間は2019年10月1日~2020年6月30日の9カ月間とされています。
ポイント還元事業に絡む思惑
バラまきをすれば楽だけど際限なくお金も使えない・・・かといってただバラまくだけではもう批判を浴びるのも必至。せっかくなら一石二鳥で副次的な効果も期待したい。それでいて大手企業優遇になっても意味がない。
色々な思惑が重なり合った結果の落としどころが今回の制度になったのだと思います。各方面の利害をひたすら調整しなければならない官僚って大変ですよね。徹夜も多いし。。。
- 消費増税による消費の冷え込みは回避したい。
・消費増税分を補填する金券相当のポイントを配布すればよくね? - いつまでも金券相当のポイントをばらまくお金もない
・ポイント配布期間は限定するしかない - そのためのインフラを用意するのは本末転倒
・既存のクレジットカード事業者やコード決済事業者のインフラ使えばいいよね!
・ついでに加盟店手数料が高くてクレジットカード導入を渋っていた中小企業にも補助金を出すからキャッシュレス導入させて2020年東京オリンピックに向けてキャッシュレス決済を普及させよう!
- 一律にポイント還元すると結局大手だけが儲かるのでは?
・中小企業のみを対象とすればいい (5%還元)・大手企業のフランチャイズ加盟店はポイント還元率を下げれば不公平感も解消されるはず (2%還元)
経産省の「キャッシュレス・ビジョン」(2018年) でも言及されているとおり、日本は現金を好む国民性や治安の良さもあり、なかなかキャッシュレス決済が普及しません。今回のポイント還元事業はキャッシュレス決済普及の起爆剤としての役割も公然と期待されています。
あくまで9カ月間の時限措置の予定
4,000億円という予算を計上して実施する一大プロジェクトではありますが、増税後の9カ月間 (2019年10月1日 ~ 2020年6月30日) の時限措置です。
ポイント還元対象は「税込みの支払金額」
割と見落としがちですが、例えば税抜き10,000円の買い物をする際のポイント還元を考えてみるとバカにならない差が出てきます。
- 税込み支払金額に対する還元 : 10,000円 x 1.10 = 11,000円の5%還元 → 550円相当
- 税抜き支払金額に対する還元 : 11,000円支払うが10,000円の5%還元 → 500円相当
経産省の解説は以下のとおりです。
本事業において補助の対象となる消費者還元の方法は、原則として決済事業者(イシュアー)が、決済額に応じたポイント又は前払式支払手段を消費者に付与する方法により行うこととする。
「決済額に応じた」と明記されているので、消費税込みの実際の支払金額に対してポイント還元の計算が行われるという事になりますね。
よくある勘違い
いわゆる軽減税率によって、酒類・外食・ケータリングを除く食料品の購入 (テイクアウト含む) などが消費税率8%に据え置きになります。
それに加えて、5%または2%還元という二通りのポイント還元率のため、ざっくり分類すると上記の表のとおり、ポイント還元率は5通りになるため非常に複雑に見えます。
表中の赤丸で囲った二つのケース、大企業から軽減税率対象品を買う場合と、大企業FC店舗 (ポイント還元加盟店) から軽減税率対象外品を買う場合も同様に「実質消費税8%」かというと厳密には異なります。
(1) 大企業から軽減税率対象品 (消費税8%据え置き) を買う場合
10,000円分の買い物をした場合、
10,000円 x 消費税8% : 10,800円の支払いで、ポイント還元はありません。
(2) 大企業FC店舗 (ポイント還元加盟店) から軽減税率対象外品 (消費税10%) を買う場合
10,000円 x 消費税10% : 11,000円の支払いに対して2%のポイント還元が発生します。
11,000円 x 0.98 = 10,780円 が実質の負担になります。
微々たる額でもポイント分お得に
上の例でも示した通り、消費税適用後の支払総額に対するポイント還元が行われます。そのため、出来るだけ「キャッシュレス・消費者還元事業」の加盟店で買い物をする方がお得と言うことになります。
ポイント還元のされ方もキャッシュレス決済事業者によって異なる
大多数のクレジットカード事業者は「請求金額から差し引き」
以下のクレジットカード会社は、毎月の請求からキャッシュレス・消費者還元事業ポイントの分だけ請求金額を差し引きます。事実上、キャッシュバックになってますね。
- 三井住友カード
- 三菱UFJニコス
- クレディセゾン
- ユーシーカード
- イオンフィナンシャルサービス
- JCB
- ライフカード (毎月15,000円まで)
- ビューカード (同上)
- アメリカン・エキスプレス (期間中9カ月合計135,000円まで)
- etc.
最大15,000円/月または9カ月で135,000円 (= 9 x 15,000) がポイント還元の最高額になるため、この制度を利用するかしないかで最大135,000円もの差が生じてしまいます。現金決済に拘るのは明らかに損です。
自社ポイント+追加特典で還元のカード会社も
楽天カードの場合
毎月15,000ポイントを上限に、楽天スーパーポイントで還元されます。楽天市場に出店している対象加盟店であれば、スーパーポイントアッププログラムの対象にもなるため、最大で実質8%~のポイント還元が見込めます。
ポイント還元の裏技?抜け穴?
月に15,000円のポイント還元上限に達した場合、同イシュアでも別カード (デビットカードやプリペイドカード含む) を利用すればカードごとに15,000円分のポイント還元枠がある様です。
もちろん異なるイシュア間で相互に15,000円のポイント還元上限到達の有無なんぞ確認できるわけもなく・・・。
常時5%の還元でも、15,000円の還元を受けるには30万円の決済が必要なので2枚目、3枚目のカードへ「乗り換え」が必要になる方もそうそういないとは思いますが。沢山決済する方は複数枚のクレジットカードを用意しておくに越したことはありません。
因みに大手コンビニは即時値引きを適用
経産省の認める例外 (店頭での購買時に、即時利用可能なポイント・クーポンなどを発行し、購買金額に該当ポイントなど相当額を充当する方法) を適用するのが大手コンビニのFC店舗。
セブン-イレブン、ファミマ、ローソン、ミニストップの大手4社は2%の即時割引を適用します。この場合、500円の買い物をしたら実際に支払う金額が2%引きの490円になります。
実際に支払う金額が490円になるため、これをベースにクレジットカードやQRコード決済時の「決済で付与されるポイント」が計算されることになります。
決済事業者・加盟店・消費者の役割
簡単にですが、以下の図を用いて消費者とそれを取り巻く加盟店や決済事業者の役割を整理してみます。
消費者
皆様読者の方や筆者など、あらゆる消費活動を行う一般の消費者がキャッシュレス・消費者還元事業の対象です。対象のキャッシュレス決済で、本事業の加盟店で買い物をすると、決済事業者からポイント還元もしくは値引きを受けることが出来るとされています。
主に以下のキャッシュレス決済方式が想定されています。
- クレジットカード
- デビットカード
- QRコード決済
- 交通系ICカード (Suicaなど)
- iD, QUICPay
- プリペイド型電子マネー (nanaco, WAON, 楽天Edyなど)
加盟店
キャッシュレス・消費者還元事業の加盟店になれるのは以下の条件を満たす中小規模の企業や個人事業主のみです。
- 小売業 : 資本金または出資総額が5,000万円以下かつ従業員50人以下
- サービス業 : 資本金または出資総額が5,000万円以下かつ従業員100人以下
- 卸売業 : 資本金または出資総額が一億円以下かつ従業員100人以下
- 製造業他 : 資本金または出資総額が三億円以下かつ従業員300人以下
この他、上記に該当するコンビニのフランチャイズ店舗、Amazonや楽天といった大手ECサイトに出店している中小企業も加盟店になることが出来ます。
決済事業者
キャッシュレス・消費者還元事業の加盟店に対して決済手段を提供する事業者を、ここでは「決済事業者」と呼んでいます。
具体的には、クレジットカード会社 (JCB、三井住友カード、楽天カードなど)、QRコード決済事業者 (PayPay、Origamiなど)、プリペイド型電子マネー事業者 (Suica、楽天Edyなど) およびこれらの決済代行事業者です。
既に400以上の事業者が決済事業者として登録しており、各社とも加盟店を一気に増やす好機と見ているのか様々なメリットを加盟店に提供することをアピールし、顧客争奪戦でしのぎを削っています。
政府
日本国の政府機関、具体的には主に経産省です。
ポイント還元の原資を負担するだけでなく、中小規模の加盟店向けにクレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済設備の初期費用の三分の二を補助金として負担します (残り三分の一は決済事業者負担)。決済手数料の三分の一も国による補助金で賄われます。
この事業のために用意されている予算は4,000億円と言われています。当然ですが原資は日本国民の税金です。
ということで、キャッシュレス・消費者還元事業のポイントの出所は税金ですので、節税に熱心な方はこれを効率よく取り返しましょう。
消費者としてポイントを取りこぼさない様に気を付けるべきこと
「加盟店」であることをお買物の前に確認!
「キャッシュレス・消費者還元事業」の加盟店には必ずこのロゴがどこかに貼ってあります。ポイント還元を期待して買い物をする前にロゴがあるか確認しておきましょう。
無かったら加盟店ではないという事になりますので。
自分の支払う方式で「加盟」しているかをお店にも確認
例えば、元々PayPay加盟店であった何某商店で、「キャッシュレス・消費者還元事業」向けに新たに決済事業者と契約したとしても、その決済事業者がPayPay非対応であった場合は、何某商店でPayPay決済してもポイント還元の対象外になります。
例え、「加盟店」であっても、お店が対応する決済方式 = ポイント還元の対象、とは限りませんのでご注意を!
こればかりは店に聞くしかなさそうです。