Tポイントが苦境に立たされています。大手コンビニファミリーマートのTポイントジャパン株式売却報道に伴い、Tポイントプログラム離脱もあり得る提携見直しも報じられています。一方で、タイミングの悪いことに正規の手続きを踏まずに警察へTポイント会員の個人情報を流していたとも報じられてしまいました。
Tポイントと言えば、TSUTAYA、ファミマ、ドトールコーヒー、すかいらーく (ガスト、バーミヤン等ファミレス)、 Yahoo!ショッピング(オンラインショッピング)などで幅広く利用されている共通ポイントプログラムであり、多くのクレジットカードにも付帯されているのはご存知の方も多いでしょう。
今回は苦境に陥ったTポイントについて、この二つの報道の詳細と、現在の苦境の原因について考察してみたいと思います。業界地図が塗り替わるようなインパクトが果たしてあるのでしょうか。
ファミリーマート、Tポイントジャパン株式を全株売却検討
昨年5月ぐらいから報じられていましたが、コンビニ大手のファミマがついにTポイントプログラムの運営企業である「Tポイントジャパン」の株式を全株売却するという方向性を明示しました。
Tポイントと言えばファミマ!と言われるほど影響力が大きい加盟店であるファミマに距離を置かれてしまうのは非常に苦しいです。「えっ、Tポイントって危ないの?これまで貯めたポイントどうなるの?」などといった疑念を呼び起こしてしまうインパクトがあるのではないでしょうか。
ユニー・ファミリーマートホールディングス傘下のファミリーマートが共通ポイント「Tポイント」を運営する会社の株式を売却する方向で調整に入った。日経 xTECH/日経コンピュータの取材で2019年1月18日までに分かった。ファミマはTポイントに加えて、楽天とNTTドコモの共通ポイントを採用する方針を固めており、Tポイントを主導してきたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は戦略の見直しを迫られそうだ。
(略)
ファミマはTPJ株の売却と並行して、2019年11月にも楽天の「楽天スーパーポイント」とドコモの「dポイント」を採用する方針だ。これまでファミマで使える共通ポイントはTポイントだけだったが、その独占が崩れることになる。
CCCは共通ポイントで先行したこともあり、加盟企業に対して他社のポイントを採用することに否定的だった。ファミマと並ぶTポイント陣営の中核で、ファミリーレストラン「ガスト」などを展開するすかいらーくホールディングスも複数ポイントの採用を検討している。小売りや外食業界を中心に、複数の共通ポイントを導入する「マルチポイント」の流れが今後も加速するのは避けられそうにない。
引用元 : 日経 xTECH [スクープ]ファミマがTポイント運営会社の株売却へ、CCCは戦略見直し必至
今のところはTポイントを残しつつ、dポイントと楽天スーパーポイントを新たに共通ポイントプログラムとして採用する様です。ポイント還元率については明確になっていないため、Tポイントと同じく200円/1ポイントの0.50%還元なのか、ローソンなどと同じ100円/1ポイントの1.00%還元になるのかまでは分かりません。
(゚∀゚) 「Tポイントカードはお持ちですか?」
( ゚Д゚) 「・・・あります (いちいち言われなくても今出すからちょっと待ってよ)」
こうしたやり取りがファミマで日常的に見かけられますが、今年の11月からこうなるんですね、わかります。
(゚∀゚) 「Tポイントカードはお持ちですか?」
( ゚Д゚) 「」
(゚∀゚) 「dポイントカードはお持ちですか?」
( ゚Д゚) 「」
(゚∀゚) 「楽天ポイントカードはお持ちですか?」
( ゚Д゚) 「・・・Tポイントでお願いします」
(゚∀゚) 「かしこまりました、dポイントですね!」
( ゚Д゚) 「だからティーポイントっつってんだろこのすっとこどっこい!!」
そういえば、楽天EdyとiD (アイディ) もよく間違えられました。
「Edy (エディ) でお願いします」
「はい!iD (アイディ) ですね!!」
これも楽天Edy使い始めた頃は地味にイラッとすることがありました。懐かしいなあ。
どうなる?ファミマTカード
ファミマTカードは今後も使えるの?
「Tポイントの独占が崩れる」とあるので、ファミマでTポイントが使えなくなるわけではなさそうです。お手軽なクレジットカードとして知られている、「ファミマTカードJCB」については一応今後も発行が続くものと思われます。しかしdポイントと楽天スーパーポイントを採用する以上、dカードと楽天カードの宣伝もしなければならなくなるかも知れません。なので以前ほど、ファミマTカードの申込書だらけではなくなる予感。
ともかく、Tポイントとしては取扱高は確実に減るため苦しい状況です。
すかいらーくもTポイント以外のポイントとの提携を模索
また、同記事によると、Tポイント加盟店の中でファミレス大手の「すかいらーく」グループがTポイント以外に他社の共通ポイントも採用することを検討しているとのこと。これまでTポイントしか貯まりませんでしたが、もしdポイントやPontaポイントが第二、第三のポイントプログラムとして採用された場合は多くのユーザがTポイントから流出するのは目に見えています。
これもTポイントの苦境に拍車をかけています。
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(追記) ドトール、エクセルシオールもTポイントから離脱
本記事執筆後の2019年2月1日、突如としてTポイント公式サイト (http://tsite.jp/) にて、ドトール・エクセルシオールカフェのTポイント離脱が発表されていました。
Tカードを出させてチンタラ会計してミラノサンドをはじめとするフード類の提供時間の体感を短くする、という思惑は外れてしまったのか、はたまたTポイントと組んでいると経営上マイナスの方が大きいと判断されてしまったのでしょうか。
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Tポイント会員情報が不正に警察機関へ提供されていた?
情報セキュリティ関連の不祥事などが大々的に報じられるようになってきた昨今、このやらかしはちょっと痛いです。利用規約に明示がないまま、Tポイント運営がTポイント会員の個人情報を捜査当局へ提供していたことが明らかになりました。
「捜査関係事項照会」という法令に基づく手続きを経た個人情報照会であれば手続き上は問題ありません。恐らくどのポイントプログラムでも多かれ少なかれ行っているものと思われます。
しかし、正規の手続きを経ずにこれを行っていたのは良くないですね。明らかなイメージダウンです。
コンビニやレンタルショップなど、さまざまな店で買い物をするとポイントがたまるポイントカード最大手の一つ「Tカード」を展開する会社が、氏名や電話番号といった会員情報のほか、購入履歴やレンタルビデオのタイトルなどを、裁判所の令状なしに捜査当局へ提供していることが20日、内部資料や捜査関係者への取材で分かった。「T会員規約」に当局への情報提供を明記せず、当局も情報を得たことを本人に知られないよう、保秘を徹底していた。
Tカードの会員数は日本の人口の半数を超える約6700万人で、提携先は多業種に広がる。
引用元 : 共同通信Tカード情報令状なく捜査に提供 規約明記せず、当局は保秘
韓流アイドルに批判的な会員の個人情報や性癖をバラすぞ!と脅したTsutaya店員の話や、NGT48の女性アイドルの住所を流出させた疑いの話など、他のポイントプログラムに比べるとどこか個人情報の取扱いに不安が残ります。
(追記) 東京新聞がより詳細な個人情報の提供状況を報道!
1月21日付朝刊にて、東京新聞が共同通信の記事よりもかなり細々と情報提供の不適切さを指摘する記事を掲載していました。かなり左巻きの新聞社なので鵜呑みにして良いものか考え物ではありますが。
記事の内容が事実であるとしたら、「警察内部の手続きとしては問題がなかったが職権乱用の疑いあり。CCCはTポイント会員に対して情報提供の対象となる第三者の定義を明記せず長年捜査当局に個人情報を提供し続け、情報管理が甚だ不適切。」と非難されても仕方のないところでしょうか。
相当に、警察もTポイント会員の情報を操作に活用していたようです。ポイント付与の履歴を追えば日常の消費行動も丸見えだし、ビデオレンタルの履歴から猟奇殺人などの趣味を持った人を「予備軍」としてピックアップしておくこともできます。実際にレンタル履歴を取得していたとのことなので、そうした目的のリストアップに使われていたとしても全く不思議ではありません。
警察や検察の内部資料によると、Tカードの(1)会員情報(氏名、生年月日、住所など)(2)ポイント履歴(付与日時、ポイント数、企業名)(3)レンタル日、店舗、レンタル商品名-のほか店舗の防犯カメラ画像などを入手できるとしている。ポイント履歴やレンタル履歴は、過去十三カ月間保存と記載されていた。
問い合わせ先はCCC本社の一部に絞り、郵送で回答。照会方法は二種類あり、対象人物のカード番号か、住所、氏名、生年月日があれば調べられる。捜査当局は内部で、CCCから得た情報を本人に告げてはならず、察知されるような言動も慎むよう通達。特にレンタル履歴は厳重に取り扱うよう定めている。
(略)
捜査当局はTカードの履歴を対象者の「足跡」として、積極的に活用している。捜査関係者によると、ポイントサービスを展開するCCCへの情報照会は日常的で、一度に数十件の照会をした部署も。数の多さにCCCの回答が遅れがちとなり、利用ルールを守るよう当局内で周知されたこともあった。
(略)
ある事件では、捜査担当者が対象者のTカードを照会したところ、ほぼ毎日、同じ時間帯に特定のコンビニに来店し買い物をしていると判明。店の防犯カメラの映像から本人と特定し、待ち伏せして身柄を拘束した。捜査関係者は「ポイントが付くのに、カードを提示しない理由はない」と話す。Tカードを貴重な情報源と位置付けている。
引用元 : 東京新聞 Tカード情報、令状なく提供 レンタルやポイント履歴 会員規約に明記せずhttps://japan.cnet.com/article/35131549/
「捜査当局は内部で、CCCから得た情報を本人に告げてはならず、察知されるような言動も慎むよう通達。特にレンタル履歴は厳重に取り扱うよう定めている。」とありますが、警察側も後ろめたさもあれば、あまりよろしくないことをしている自覚もあったんじゃないでしょうか。Tカード以外の共通ポイントプログラムからも同様の手口で情報を得ていることは想像に難くないとはいえ。
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(追記) CCC (カルチュア・コンビニエンス・クラブ) 自身が警察への不適切な情報提供を激白!!
流石にネガティブ情報が独り歩きし過ぎてはまずいと思ったのか、早々にTポイント運営企業の親会社である、CCC (カルチュア・コンビニエンス・クラブ) がコメントを発表しています。ウダウダと回りくどく書いてありますが、かいつまんで言えば以下のとおりです。
- 捜査令状なしで情報提供していた、というのは誤りである
- 捜査令状があった場合は情報提供していた
- 2012年以降は、「捜査関係事項照会書」があった場合にも情報提供していた
- Tポイント会員規約や個人情報保護方針に、捜査機関への情報提供についての明記はなかった
会員規約への明記なしに、捜査当局へ長年Tポイント会員の個人情報を提供してきたのは事実である、とCCCが認めたことになります。
中国のスマホ会社もドン引きするレベルの杜撰さじゃないでしょうか。社会貢献のため、と言って、「なら仕方ないよね」で済ませられる範疇を超えているのでは・・・。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、Tカードの情報に関する一部報道を受けコメントを発表した。
これは、Tカードの会員情報を捜査令状なしに提供しているという一部報道を受け、発表したもの。コメントでは「従来よりお客様から個人情報をお預かりするとともに、データベースの適切な管理を実施してきた。その個人情報の取り扱いに関しては、捜査令状があった場合にのみ、必要最小限の個人情報を提供するという協力姿勢をとってきた」とした。
さらに、2012年からは「『捜査関係事項照会書』があった場合にも、新たに施行された個人情報保護法に則り、一層の社会への貢献を目指し捜査機関に協力してきた」と現状について説明した。
今後は、個人情報保護方針およびT会員規約に明記し、細心の注意を払っていくとしている。
引用元 : CNET CCC、Tカードの情報に関する一部報道に対しコメント
個人情報の取り扱い規則が杜撰であったと自身で認めたことになります。悪材料出尽くしとなれば良いですが、現状を見る限り、「泣きっ面に蜂」と言っても良いぐらい苦しい状況の中でネガティブなニュースが報じられることになってしまいました。他の共通ポイントプログラムでも似たような情報提供は恐らくあると推測されますが、Tポイントとしてのイメージの悪化は避けられません。
Yahoo! (ヤフー) からも見放されたTポイント
これまで「期間限定Tポイント」としてYahoo! JAPANカードなどでポイントの大盤振る舞いが続いていましたが、Yahoo!はこれをスマホ決済「PayPay」のポイントに置き換える旨の発表を昨年11月頃に既に行っています。
2019年4月から、「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」「LOHACO」「Yahoo! JAPANカード」の4サービスのキャンペーン等で付与している期間固定Tポイント(※1、2、3)を電子マネー“PayPay”(※4)の付与に変更します。“PayPay”は、「PayPay」を導入している実店舗(※5)とインターネット上のサービスの両方で使用できます。なお、ヤフーの各種サービスで付与している通常のTポイントは、2019年4月以降も継続します。
引用元 : ヤフー株式会社プレスルーム
もはやYahoo!にとってTポイントは用済みなのかも知れません。実際、自社グループで完結する決済サービスであるPayPayのサービスが開始されているため、わざわざ他社に手数料を払ってまでTポイントプログラムのインフラに乗っかってサービスを展開しても旨味が少ないと判断したのかも知れませんね。
ドコモやauが共通ポイントプログラムを引っ提げて、スマホ決済に乗り出して来ていることもあり、ソフトバンクグループとしても収益性の高い方式に一本化して競争力を高める必要があるという背景も勿論あるはずです。
もしかするとTカード付帯型以外が出てくるかも・・・
そのため、Yahoo! JAPANカードについてですが、Tポイントカード機能が付帯しないものや、PayPay機能が付帯したもの等が今後リリースされてくる可能性が高いと個人的には考えています。Yahoo!ショッピングにおける標準電子マネーがPayPayになると言っているようなものですからね、このプレスリリース。
会員数は多いが・・・、Tポイントの苦悩
共通ポイントプログラムのさきがけということもあり、Tポイントの会員数は飛び抜けて多いです。その数実に6700万人と、日本の人口の半数以上がTポイントの会員である計算になります(一人で複数のTポイント会員番号を保持できるため、重複込みの可能性もありますが)。この点は他の共通ポイントプログラムの追随を許しません。しかしながら、その優位性をうまく活用できているとは言い難いです。
特に共通ポイントと絡めた電子マネー分野ではTマネーでも失敗しており、先行者の優位性を活かした、共通ポイントのプラットフォーマーになるチャンスを逸してしまったと言って良いでしょう。
Tポイントカードごとにポイントが分散する問題も完全に解消しているとは言えず、Tマネーも還元率が低く加盟店も少なく非常に使いにくく、わざわざ使うメリットも薄いです。CCCの戦略的なミスがボディブローのように効き続けている状況で明るい話題がまったく聞こえてきません。いつになったら暗いトンネルを抜けられるのでしょうか。
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おわりに
今回はコンビニ大手ファミマのTポイント運営会社株式売却や、Tポイントの不適切な個人情報提供といったニュースに関連して、現在のTポイントの苦境や、今後のYahoo! JAPANカードの展望 (個人的な妄想かも知れませんが) についてお話しました。
最後まで読み進めていただき、ありがとうございました。