今回はクレジットカードに付帯する、「ショッピング保険」について、いったい何の被害・損害を補償してくれるものか?という解説記事です。
昨年のスマホ決済サービス「PayPay (ペイペイ)」を踏み台にしたクレジットカード不正使用で、不正使用被害に遭ったらその分をクレジットカード会員が支払わなければならないのか?そもそもクレジットカードってどんな補償サービスが付いているんだっけ?ということを慌てて調べ始めた方も多いのではないでしょうか。また、新年を迎えて新社会人になる方がクレジットカードを申し込んだり、申込み履歴の喪明けに乗じて新年一発目の多重申込みをされる方なども、ここで今一度「ショッピング保険」が補償してくれる内容について振り返っておきましょう。
結論から申し上げますと、ショッピング保険と盗難・紛失保険 (クレジットカード不正使用の補償) はまったくの別物です。ショッピング保険とは、そのクレジットカードで購入した商品について、商品の破損・盗難による損害を補償してくれる保険です。たとえばお土産に購入した商品が移動中に目を離した隙に盗まれてしまった・・・といった場合でも補償期間内ならば補償してもらえる、とても素晴らしい保険です。
本稿ではショッピング保険について概要から詳細まで分かりやすく説明します。読んでいただければどんなに便利なものか分かりますよ。
ショッピング保険はメリットを理解して使えばとても便利でお得な保険!
ショッピング保険の正式な名称は、「動産総合保険」です。多くのクレジットカード会社では分かりやすく表現するために、「ショッピング保険」もしくは類似の呼称 (例 : dカードの場合は「お買物安心保険」) を使用しています。「ショッピングガード」などといった名称の場合もありますが、内容はほぼ同じです。
ショッピング保険と盗難・紛失保険は全く異なる内容です
よくある勘違いですが、ショッピング保険とクレジットカード不正使用の補償 (盗難・紛失保険) は全く異なる内容です。この二つの違いをしっかりと押さえておきましょう。
ショッピング保険と盗難・紛失保険の違い
- ショッピング保険:クレジットカードでお買い物をした際の、商品の破損・盗難などを補償
- 盗難・紛失保険:クレジットカードの盗難やカード番号流出で不正使用された場合に被害額を補償
大抵のクレジットカードには不正使用時の補償が付帯しています。「自分のクレジットカードはショッピング保険が付帯していないのに不正使用されちゃったよ、どうしよう?」などと悩む必要はありませんのでご安心を。
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ショッピング保険のメリット
あまり話題にもならないショッピング保険ですが、よくよく考えてみればかなりお得で便利な補償内容です。
ショッピング保険のメリット
- 自分で使うために購入した商品が破損してしまった場合、90日以内なら補償してくれる。現金購入時は絶対にムリ。
- 家族や恋人、友人へのプレゼントの破損さえも補償してもらえる。
例えば、自分で使うために購入したコートが盗まれてしまった場合、補償期間内 (大抵は購入から90日以内) であれば全額補償されます。同様に、クリスマスプレゼントで恋人に渡したネックレスが盗まれてしまった、こういう場合でも補償が利きます。
ご家族や友人へのプレゼントを相手に渡した後でも、ショッピング保険が付帯していれば例え壊れてしまっても、同様に補償期間内であれば補償してもらえます。
いずれも現金で購入した場合には絶対に付帯しないであろう特典です。
ショッピング保険も万能ではありません。適用外になる場合もあります!
クレジットカードの種類によって、リボ・分割払いのみ、海外利用分のみを補償対象としている場合あり
例えば、年会費無料の楽天カードの場合は、JCBブランドのカードにしかショッピング保険が付帯しません。また海外利用分のみが補償の対象となっています。
dカードの場合、国内利用分については「リボ・分割払い」を支払方法として選択しており、支払い回数が3回以上であることが補償対象になる条件になっています。
ゴールドカードなど年会費10,000円以上のクラスのクレジットカードの多くは、こうした支払い方法・支払いを行った場所などによる縛りを設けておらず、国内・海外問わず基本的にどの支払いについても補償対象となる場合が多いです。
あまり強調されることも多くありませんが、格安ではない、年会費10,000円以上のクラスのゴールドカードやプラチナカードのメリットはこうした点にも存在しているのです。空港ラウンジなど、T&E関連の特典がゴールドカードのメリットとしてクローズアップされる場合が多いですが、こうしたショッピング保険のメリットももう少し認知されて良さそうなものですよね。
商品の種類によっては補償の対象にならないことも
以下、dカードの例を挙げて説明します。dカードでは以下の商品はショッピング保険の対象外です。
ショッピング保険対象外リスト!
- 船舶、航空機、自動車、原付自転車、雪上バイク、ゴーカート等
- 自転車、ハンググライダー、パラグライダー、サーフボード、カヌー、ウィンドサーフィン、ラジコン模型
- 義歯、義肢、眼鏡、コンタクトレンズ
- 携帯式通信機器 (移動電話、ポケベル等)
- 可動型電子機器類 (ポケコン、電子手帳、電卓、ノートPC、ワープロ専用機)
- 現金、手形、小切手、有価証券、印紙、切手、乗車券、プリペイドカード、各種チケット
- 稿本、設計書、図案、帳簿類
- 動植物
ざっくりと言えば以下の商品は対象外という事になります。
乗り物全般など屋外で事故に巻き込まれたりしやすいもの
義歯・義肢・眼鏡など日常的に負荷がかかる生活補助のための医療器具
携帯式通信機器 (移動電話とありますが、携帯電話、スマートフォン、iPadやアンドロイドなどのタブレットPC、ポケットWiFiなども対象外と思われます)
可動型電子機器類 (ノートPCもダメです)
現金や有価証券も補償の対象にしてしまうと犯罪の片棒を担ぐことになりかねないため禁止されていると思われます
原稿や設計書など著作権の及ぶ原本も当然ですが補償してられないでしょう
ペットや実験用動物が逃げてしまったから補償しろと言われてもムリでしょう。同じく植物が枯れてしまったから補償しろと言われてもやっぱりムリだと思います。
購入後返品が効かないものや、一点物であるというところを押さえておけばOKでしょう。
逆に言えば以下の商品は対象内になり得ます。
指輪、ネックレス、宝石
衣類全般
デスクトップPC、サーバ機器、固定型ネットワーク機器
玩具全般
書籍全般
一点ものであっても衣類や宝飾品についてはショッピング保険付帯クレジットカードで購入する限り、一般的には補償の対象となります。
家庭用ゲーム機はどうなの?と言うと、PS4は補償の対象になりそうですが、Nintendo Switchや3DSなどの通信機能を有する携帯可能なゲーム機については都度カード会社や提携保険会社の指示を仰ぐ必要がありそうです。
ノートPCやスマートフォンなどが補償対象に含まれていないのが個人的にはとても残念なところではありますが、スマホを落として画面を割っているのを全部補償していたらキリがなさそうなので仕方ないところかもしれません。
特にdカード付帯の補償と考えると、ドコモが別途有料で案内しているケータイ補償やタブレットPC補償と競合する領域でもありますし。
ショッピング保険が適用外になる状況もあります
以下、dカードのショッピング保険金支払い不可能な条件を例に説明します。
保険金が支払われない場合
- 故意による損害
- 商品を誤った方法で使用して発生した損害
- 経年劣化や保管状況が悪かったことに起因する損害
- 商品の設計や材質の欠陥による損害
- 戦争・暴動・公権力による損害
- 核燃料物質被害による損害
- 水災・地震などの災害による損害
- 詐欺・横領による損害
- 電気的事故・機械的事故による損害
- 置き忘れ・紛失による損害
1. 故意による損害
補償を受けたいからとわざと商品を壊した場合など、当然ですが補償対象外です。「買ったものが気に入らないから壊して代金返してもらおう」というのはナシ!
2. 商品を誤った方法で使用して発生した損害
被保険者側の過失による損失は補償対象外です。
3. 経年劣化や保管状況が悪かったことに起因する損害
経年劣化(ずっと使っていてカビたり錆びたり変形・変質したり)については破損と認められません。例えば一部プラスチック製品の黄ばみなどをいちいち補償してたらキリがありませんし。。。
4. 商品の設計や材質の欠陥による損害
商品の製造者の責による損失のため、ショッピング保険で補償する内容ではありません。
5. 戦争・暴動・公権力による損害
保険会社のカバーできる範囲を超えてます。
6. 核燃料物質被害による損害
これも同じ。
7. 水災・地震などの災害による損害
火災保険や地震保険によって補償されるべき損害です。
8. 詐欺・横領による損害
事件性の有無の確認に時間がかかりますし、本来は詐欺や横領の犯人が補償するべきもの。また、「詐欺にあったから補償してよ」というのに応じていたらクレジットカード会社と保険会社が詐欺被害者になってしまうリスクがあまりに高すぎますよね。
9. 電気的事故・機械的事故による損害
例えば供給される電力が一時的に100/110Vから上下に変動して電化製品が壊れたりした場合でしょうが、こうした場合は事故を起こした側が損失を補償します。ショッピング保険の補償対象とはなりません。
10. 置き忘れ・紛失による損害
いわゆる、被保険者側の「重大な過失」に分類されるケースです。一般的に補償対象とはなりません。
+α 物品の配送中に生じた損害は対象となりません。
配送業者の手落ちによる損害なので配送業者側からの補償が行われてしかるべきです。一般的には高額商品を配送する際には配送元が運送保険に加入しているため、その範囲での補償となります。
逆に言えば、ご自身が事業や業務で高額商品を配送する際には(配送元となる場合は)、運送保険に加入しないと配送中の事故で高価な品物を壊されてしまっても補償が殆どありませんので、運送保険に入りましょう。
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ショッピング保険を請求する際に必要なもの
一般的に以下の書類を提示するように、クレジットカード会社、提携保険会社から要求されますのでしっかり準備しておきましょう。
- 保険金請求書 (カード会社からフォーマットが提供されます)
- お買物に使用したクレジットカードのコピー
- 盗難事故を証明する書類 (盗難の被害届を出した際の受理番号は必須)
- 購入時のクレジットカード利用控え
- 購入時のレシートまたは領収書
- 破損した商品の写真 (盗難以外の場合)
- 修理の見積書 (一部破損の場合)
- 修理不可能である旨の証明書 (全損の場合)
クレジットカードごとに、補償金額や保険適用条件が異なります。しっかり押さえておくべし!
ショッピング保険を活用するには、ショッピング保険の補償対象を事前に把握しておくと良いでしょう。同様に、補償期間 (一般的には購入から90日以内ですが例外がないとは限りません)、支払い方法による制約といった点も把握しておきましょう。
以下のテーブルに主要なクレジットカードのショッピング保険補償内容と、各カードに付帯する独自補償内容についてまとめました。クレジットカード選びの際にお役立てください。
年間補償最高額 | 一事故あたり免責額 | その他の制約事項 | その他独自の補償 | |
---|---|---|---|---|
楽天カード | 50万円 | 1万円 | 海外利用のみ、JCBブランドのみ | 商品未着あんしん制度 (楽天市場内の利用に対して賞品未着時の請求取消し) |
楽天ゴールドカード | 50万円 | 1万円 | ||
楽天プレミアムカード | 300万円 | 1個1組1万円以上の商品に適用 (免責1万円) | 補償対象には一部対象外商品あり | |
三井住友VISAゴールドカード | 300万円 | 3,000円 | ||
JCBゴールドカード(OS) | 500万円 | 3,000円 | ||
アメリカン・エキスプレスカード | 500万円 | 1万円 | リターン・プロテクション (返品を受け付けてもらえない場合に1回最高3万円まで補償、年間最大15万円まで) | |
アメリカン・エキスプレス・ゴールドカード | 500万円 | 1万円 | ||
ANAアメリカン・エキスプレス・カード | 200万円 | 1万円 | ||
ANAアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード | 500万円 | 1万円 | リターン・プロテクション | |
dカード | 100万円 | 3,000円 | 国内利用 : リボ・分割払い (3回以上) のみ補償対象 | |
dカード GOLD | 300万円 | 3,000円 | ||
ライフカード | 50万円 | 1万円 | 海外利用のみ、JCBブランドのみ | |
ライフカードch(年会費有料) | 300万円 | 5,000円 | 国内利用のみ |
おわりに
今回は以下の点についてのお話でした。
- ショッピング保険はクレジットカード不正使用による被害の補償でなく購入品に対する補償である事
- ショッピング保険の補償期間は一般的に90日以内
- ショッピング保険には補償対象外となる商品があること
- 補償対象になる支払い方式やカード利用場所が限られる場合があること
- 破損や盗難の状況によっては支払いを拒否される場合があること
最後まで読み進めていただき、ありがとうございました。