前回に引き続き、今回はクレジットカードに特典として付帯する海外旅行保険と国内旅行保険、この「家族特約」と「家族会員カード」のそもそもの違いや有事の際に受けることのできる補償の違いについて説明します。18歳未満のお子様を連れて海外旅行を計画している方は必見です。
海外旅行保険・国内旅行保険といったクレジットカードに付帯する保険関連の説明は以下の記事をどうぞ。
「家族特約」は18歳未満の子供を含む「非家族会員」を対象とした補償です
家族で海外旅行に行くとき、旅行代理店や空港で「取り急ぎ海外旅行保険に入っておくか」とプランを見て思わぬ出費に目をひん剥いてしまった方は多いのではないでしょうか。自分一人ならともかく家族全員分を支払うと余裕で1万円を超えてしまったり、高齢の親を旅行に連れ出そうとしても年齢規定に引っかかって保険に加入できなかったり、という方もいるでしょう。
そんな場合、家族特約つきの海外旅行保険を付帯したクレジットカードを持つことが解決案のひとつになる事もあります。
家族特約とは、クレジットカード本会員 (=付帯保険加入者) 以外の「家族会員カードを持たない家族」に対しても疾病(病気)や傷害(ケガ)の治療費、賠償責任や盗難被害、携行品の破損といった補償を行ってくれる特約です。
クレジットカード年会費には家族特約にかかる費用が含まれているため、海外旅行保険に加入することなく家族全員分の保険をカバーすることが出来ます。
18歳未満の子供はクレジットカードの海外旅行傷害保険を利用できません。家族カードを含めたクレジットカードは18歳以上の方にのみ発行されるものです。家族特約は18歳未満の子供にも補償が行われるため、子連れで海外旅行に行く方にとっては有力な選択肢の一つになります。
家族特約のメリット・デメリット
家族特約付きの旅行保険付帯クレジットカードのメリット
クレジットカードを作れない家族の保険に利用可能
家族特約は18歳未満の子供を中心に、クレジットカード発行が不可能な家族に対して適用されます。通常、18歳未満の子供は本人名義のクレジットカード (本会員カード・家族会員カード) を作成できません。そのため、海外・国内旅行保険に加入したい場合、一般保険会社の保険商品を都度契約する以外の方法がありません。しかし家族特約つきのクレジットカードを持つ家族がいる場合、こうした18歳未満の子供も保険適用対象になります。
保険加入者 (カード会員) が同行しない旅行でのアクシデントに対しても補償が適用される。
家族特約はカード会員本人が同行しない旅行でも同様に適用されます。
例えば、カード会員の配偶者と子供だけの海外旅行で発生した事故に対しても保険適用となります。子供の修学旅行先が海外だったりする場合に心強いです。また、家族特約対象になる家族は、本会員のクレジットカードを携行していない場合でも補償が適用されます。しかし実際にはクレジットカード裏面に記載されたサポートデスク経由で補償を受ける場合が殆どでしょう。出発前に万一の連絡先としてメモをとっておくことをおススメします。
また、家族特約が付いていても、「利用付帯」のクレジットカードの場合はそのカードで旅行代金を支払わない限り保険適用対象となりませんのでご注意を。
家族特約の付帯するカード・しないカードの例
カード名称 | 疾病治療 | 障害治療 | 家族特約 |
---|---|---|---|
JALカード (ClubA以上のVISA, Mastercard) | 150万円 | 150万円 | 〇 |
JCB CARD R | 100万円 | 100万円 | × |
JCBゴールドカード JALカード (ClubA以上のJCB) | 300万円 | 300万円 | △ |
JCBプラチナカード | 1000万円 | 1000万円 | △ |
三井住友VISAゴールドカード 三井住友VISAプライムゴールドカード | 300万円 | 300万円 | △ |
セゾンゴールド・アメリカン・ エキスプレス・カード | 300万円 | 300万円 | 〇 |
アメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード | 200万円 (利用300万円) | 200万円 (利用300万円) | △ |
MUFGカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード | 200万円 | 200万円 | 〇 |
〇 ・・・本会員と同額付帯
△・・・本会員より少ない額が付帯
× ・・・付帯しない
金額だけ見ればJCBプラチナが圧倒的に優位なのですが、実は家族特約はクレジットカード会社ごとに適用される範囲が異なります。ここからは家族特約が適用される範囲について説明します。特約の適用範囲を踏まえた上でクレジットカードを選ぶことが肝要なのです。
肝心の「家族特約」の適用範囲は?~義両親と海外旅行~
実際のクレジットカード付帯保険の家族特約に関する規約を読んでみるのが一番早そうです。
ということで定番カードの、 三井住友VISAゴールドカード の規約を参照します。
【対象となる家族の範囲】
1.本会員と生計を共にする19歳未満の同居の親族
2.本会員と生計を共にする19歳未満の別居の未婚の子親族とは6親等以内の血族または3親等以内の姻族となります。ただし、以下の条件を満たす方となります。
海外旅行の目的をもって住居を出発した時点において、上記1~2に該当する親族であること。
(例:旅行出発後出産されたお子さまなどは対象となりません。)
事故発生時、発病時または費用発生時において、上記1~2に該当する親族であること。
ただし、「19歳」の判断基準は、家族特約対象者が海外旅行の目的をもって住居を出発した日時点の年齢により判断します。
家族特約は本会員と生計を共にしていることが前提となりますので、同居の親族であっても、お勤めをされている家族の方などの場合は家族特約の対象とならない場合がございます。引用元 : 三井住友カード
URL : https://www.smbc-card.com/mem/service/li/hoken_kaigairyokou.jsp
「血族」、「姻族」、「親族」などなど出てきました。似た様な言葉ですが、それぞれ意味がどう異なってくるのでしょうか?
※ 旅行傷害保険の規約は「契約条件」であるため、面倒でもきちんと理解しておきましょう。
法律上の「家族」の定義
民法725条にはこう書かれています。
民法725条
次に掲げる者は、親族とする。
六親等内の血族
配偶者
三親等内の姻族
法律用語としては「血族」と「姻族」は別物です。
- 血族 … 血縁関係にある親兄弟ならびに子供 (配偶者は含まない)
- 姻族 … 配偶者の血族
なので、上に例示した 三井住友VISAゴールドカード であれば、〇親等の範囲としては配偶者・配偶者の両親 (自分から見た義理の両親)・子供・自分の両親などなど軒並み範囲内です。しかし「19歳未満」という条件が付くため、家族特約の範囲としては本会員の実子や引き取って扶養している子供に限られる場合が殆どでしょう。
そこにもう一言、「本会員と生計を共にする」とあります。本会員 (とその配偶者) による稼ぎで金銭的に充足している、という解釈が妥当です。
つまり本会員が扶養している19歳未満の働いていない実子や親戚の子など、が対象となるが本会員の両親や配偶者とその両親 (=義両親) は家族特約の対象外と言うことになります。ということで、この場合は義理の両親を海外旅行に引っ張り出す場合は、彼らの分はきちんと海外旅行保険に入る方が安全である、という結果になります。
「家族特約があるから大丈夫!」と安易に安心してはいけない例ですね。
また、JCBも同様に、同居・別居を問わず19歳未満の本会員と生計を一にする家族、が対象です。実・義理問わず両親はなかなか海外旅行保険の家族特約対象にはなり難いケースが多いようです。
家族特約の適用範囲が広いクレジットカード
流石と言うか何というか… こういうところでアメックスは懐が広いです。
*3 ご家族とは、カード会員(家族カード会員を含む)の配偶者、カード会員と生計を共にするお子様・ご両親などの親族をさします。なお、生計を共にするとは、健康保険証を共有しているか税法上扶養関係にある場合をいいます。親族とは6親等以内の血族、3親等以内の姻族の方をいいます。
引用元 : アメリカン・エキスプレス
URL : https://www.americanexpress.com/japan/contents/benefits/product/gold/travel_protection.shtml
上記は アメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード の付帯保険の規約抜粋です。簡潔かつ明快に適用条件が記載されています。流石に外資系企業だけあり、誰が見ても分かるように適用条件が明示されています。適用範囲は民法上の「親族」であり、前述した国内クレジットカード会社より広い範囲での保険適用を謳っています。
- 本会員または家族カード会員の配偶者
- 本会員または家族カード会員と生計を共にする親族
※ 健康保険被扶養者または税法上の被扶養者
海外旅行に行くなら アメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード 、と言われる所以なのかも知れません。海外旅行保険においては明らかに三井住友やJCBを上回るサービスレベルであると言えるでしょう。年会費相応なのかも知れませんが、ここは惜しみのない拍手を送っておきたいところ。素晴らしいですね!
同様に、 セゾンゴールド・アメリカン・ エキスプレス・カード や ゴールドカードセゾン も、「親族」と記載があり年齢制限がないため、本会員が扶養する子供や両親が対象であると読み取れます。
家族特約の被保険者の範囲は本会員の配偶者、本会員または配偶者と生計をともにする同居の親族、別居の未婚のお子様です。
引用元 : クレディセゾン
URL : http://www.saisoncard.co.jp/pdf/futai_hoken/amex_gold.pdf
まとめ
- 親族 … 家族特約における「親族」は、民法上の親族を指す。以下の「血族」、「姻族」も親族の一員に含まれる。夫婦両方の親戚を指す、ということ。
- 血族 … 家族特約における「血族」は、カード会員 (※.1) と血縁関係にある親、兄弟、子供を指す。配偶者は含まれない。
- 姻族 … 家族特約における「姻族」は、カード会員 (※.1) の配偶者の血族を指す。カード会員から見た義父母や義理の兄弟姉妹等が該当。
※ 本会員のみか家族カード会員も含むかは各社によって異なる
おススメの家族特約付き、旅行保険付帯クレジットカード
セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス・カード
・コストパフォーマンスに優れたファミリー向けアメックスゴールド
・JALマイル還元率1.125%、JALカードよりも貯まる! (要マイルクラブ加入)
・海外旅行保険(最高5,000万円)自動付帯+国内旅行保険付帯 (他社を上回る条件)
・その他アメックスゴールドクラスの各種サービスが充実
・空港ラウンジ利用〇
・SAISON MILE CLUB加入(年4,000円)で、JAL11.25マイル/1,000円またはANA11.5マイル/1,000円のレートでポイント移行可能年会費 ポイント還元
マイル換算審査難易度 国際ブランド 初年度無料
翌年以降10,000円(税別)0.75%~1.00%
JAL2.5マイル/1,000円
ANA3マイル/1,000円 ★★★+ 最短発行 利用限度額 サービス充実度 お得度 最短3営業日
(通常1~2週間)~300万円
(セゾン共通枠)★★★★ ★★★★
リーズナブルな年会費、家族特約の対象が「同居の親族」である補償範囲の広さ、海外旅行・国内旅行両方の傷害保険が自動付帯する安心の一枚です。恐らく最もバランスの取れた一枚でしょう。
アメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード
・海外旅行保険(最大1億円)と各種プロテクション(不正利用補償・ショッピング返品保障・盗難/紛失補償)が充実。
・海外旅行サポート … ○+
・国内空港ラウンジ … ○ (同伴者一名も無料利用可能)
・海外空港ラウンジ … ○ (プライオリティパス、スタンダード付帯)
・高級レストランの1名無料特典は健在年会費 ポイント還元
マイル換算審査難易度 国際ブランド 29,000円(税別) 0.3%~1% (最大3.0%)
ANA1マイル/100円 ★★★++ 最短発行 ステータス度 サービス充実度 お得度 通常1~3週間 ★★★★+ ★★★★+ ★★★★
海外旅行特化になりますが、家族特約の適用範囲が「親族」であり本会員と配偶者の家族が含まれます。各種補償の手厚さやカードデスク対応の丁寧さはアメックスプロパーが最も充実しています。別居親族まで適用範囲に入るのはアメックスプロパーならではでしょう。
JCBプラチナカード
・国内旅行傷害保険(最大10,000万円)/海外旅行傷害保険(10,000万円)自動付帯
・国内/海外空港ラウンジ利用 ○ (プライオリティパス プレステージ付帯)
・JCBプラチナ限定の優待、特典多数年会費 ポイント還元
マイル換算審査難易度 国際ブランド 25,000円(税別) 0.35%~2.50% ★★★★★+ 最短発行 利用限度額 サービス充実度 お得度 ~4週間 ~500万円 ★★★★+ ★★★★++
家族特約範囲が19歳未満の家族のみですが、海外旅行の疾病・障害治療費用が最大1,000万円と飛び抜けて高いのが特徴。国内旅行保険も勿論付帯します。海外旅行・国内旅行ともに保険は自動付帯するため、「子供のための保険」を第一に考えるならJCBプラチナも有力な選択肢になります。
MUFGカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード
・国内主要空港ラウンジ/海外空港ラウンジ … ◎ (プライオリティパス、プレステージ付帯)
・家族カード1枚無料、家族カード分プライオリティパス1枚無料
・プラチナ・グルメセレクション、プラチナ・コンシェルジュサービスなどAMEXプラチナグレードサービス付帯
・海外旅行傷害保険自動付帯、国内旅行傷害保険(入院保険○)自動付帯、家族特約○
・グローバルPLUS、アニバーサリーポイントなどポイントアップのチャンス多数
・初年度ポイント1.5倍、海外利用ポイント2倍、デュアルスタイルでポイント1.5倍
年会費 ポイント還元
マイル換算審査難易度 国際ブランド 20,000円
(税別) 0.40%~1.50% ★★★★++ 最短発行 利用限度額 サービス充実度 お得度 最短3営業日 50万~500万円 ★★★★+ ★★★★★+
プラチナとしてはリーズナブルな年会費で、本会員の配偶者・同居の生計を共にする両親(義親含む)および未婚の子が家族特約の対象となります。海外旅行・国内旅行傷害保険が自動付帯します。こちらもバランスの取れた補償内容のためおススメの一枚です。
海外旅行保険に加入するのとクレジットカード付帯保険、どちらが得なのか?
実際の保険料について旅行保険の比較サイトで検索してみるとこんな感じです。
- 自分を含めた家族4人
- 行き先 : グアム・サイパン
- 旅行日数 : 5日間
この条件で検索してみると、最安で4,000円程度から最高値で2万円を超えるものまでありました。
- 傷害死亡 … 加入者1000万円~3000万円 (稀に5000万のものあり)、家族1000万円
- 疾病死亡 … 加入者・家族ともに殆ど1000万円まで
- 傷害後遺障害 … 加入者・家族ともに殆ど1000万円まで
- 治療費・救援費用 … 1000万円~無制限
治療費 (疾病・傷害) が無制限になるラインが6,300円のプランあたりからです。これを安いとみるか高いとみるかで意見は割れそうです。年に一度未満しか海外旅行に行かないご家族の場合、無理してまで家族特約付きの年会費10,000円以上のクレジットカードを複数枚持つ必要はないのかも知れません。
逆に国内旅行を含め、近場を含めて頻繁に出かけるご家族の場合、海外旅行保険と国内旅行保険両方が自動付帯するクレジットカードに入っておくと、いざというときに入院費用や手術費用の補償が行われるため安心です。
おわりに
今回はクレジットカードに付帯する旅行傷害保険の家族特約について、
- 家族特約の適用範囲に関する用語の説明
- 家族特約の適用範囲がカード会社によって異なること
- 旅行や遠出の回数によっては必要なときのみ旅行保険に加入する方が節約にもなること
などについてのお話でした。
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